◇収益環境が悪化 有利子負債圧縮も課題
09年8月期の経常利益は1億1,814万円。08年8月期の2,757万円から大幅に改善された。しかし、経常利益率で見ると1.05%にとどまっている。売上総利益率の目減り分を約5億3,000万円の販売管理費削減でカバーしたかたちとなったが、わずかでも売上総利益率が低ければ赤字転落の危機にあった。
やまやコミュニケーションズの07年8月期以降の売上総利益率を見てみると、07年8月期が32.04%、08年8月期31.61%、09年8月期に至っては27.92%と大幅な下落を余儀なくされた。
同社に限らず、近年明太子業界の収益環境は厳しさを増している。デフレは業界にも影を落とし、総務省の調査では消費量が増える一方で、購入金額が減少する事態となっている。要因となっているのが「切れ子」の普及である。正規品の製造過程で生じた皮の破れや形の崩れたものを自家消費用にまとめた商品で、品質は正規品に劣らない。食品業界で急速に拡大している、いわゆる「訳アリ商品」である。同社も高額商品の開発など付加価値の高い商品作りを行なっているが、「切れ子」を取り扱わざるを得ない状況となっている。
72億円の有利子負債の圧縮も課題となっている。借入依存率64.97%、借入金月商比率は7.73カ月におよぶ。原料となるスケソウダラの買い付けから製造・販売まで一貫して手掛ける同社にとって、原卵確保のために多額の資金を要し、一定の借り入れ負担を余儀なくされる。03年8月期に112億円を超えていたことを鑑みれば、大幅な圧縮は相応に評価される。棚卸資産は27億円にとどまっており、もう一段の圧縮が不可欠になる。
◇債務保証履行を求めて訴訟起こす
定番商品が頭打ちとなっているなかで、従来から活発だったグループ企業の底上げに注力している。08年9月に直営店部門をやまやの食卓に譲渡。通信販売を手掛けている同社は、業界経験者を取り込み昨年末は積極的に広告宣伝を手掛けて顧客の囲い込みを図った。こうしたなか、かつて資金提供した企業に対して09年7月に連帯保証債務の履行を求める訴訟を起こした。
現在14社まで増加した関連会社のうち、やまやの食卓など5社については一部情報公開されているが、やまやコミュニケーションズとその他海外を含めた企業郡の経営実態が見えないのが実情だ。 メーカー各社が独自色を打ち出しているなか、同社もより強固なブランドの確立が求められるが、なにより財務体質の強化と企業グループの透明化が急務となる。
(了)
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