29日、糸島市の伊都文化会館で、糸島青年会議所主催『第1回糸島市長選挙に伴う公開討論会』が開催された。会場には500名ほどの有権者が集まり、20代、30代の男性や幼児を連れた若い主婦の姿も見られた。
討論会に参加したのは、市長選挙に立候補する予定の旧前原市の市長、松本嶺男氏と新人である佐藤俊郎氏の2名。討論は、第1次産業、商業振興、福祉政策、インフラ整備、財政基盤、これからのまちづくりといったテーマに沿って進められた。
討論は終始、両氏の市政における方向性の相違が浮き彫りとなる内容であった。特に、選挙の大きな争点のひとつと言われている『中央ルート』について、両者の意見が顕著に対立した。
松本氏は、「『中央ルート』は、1日2万3,000台という許容量の倍以上にある国道202号線の交通量を緩和する上で必要だ。また、九州大学がフルオープンした時に発生する人、モノ、情報の流れに対応できるよう県の事業として進められている」と、必要性を訴えた。
一方の佐藤氏は「(松本氏は)何度も「県の事業」と言っているが使われるのは血税である。今までの事業を見直すのが国全体の流れだ。100歩譲って、私が『中央ルート』を認めたとしても、現在予定されている大規格の道路が本当に必要なのかどうか、一度洗い直す必要がある」と、計画の内容に対する意見を述べた。
終盤には両者間で質疑応答が行われた。佐藤氏の質問は、『白糸地獄谷の残土埋め立て問題』に関するもの。松本氏が、旧前原市の市長であった昨年末まで静観の構えをとっていたにも関わらず、最近になり「糸島市長になれば反対する」と表明したことについて問い質した。松本氏は、問題の推移を説明した上で「理論的に反論できるまでには時間がかかった」と答弁した。
次に、松本氏は、佐藤氏が配付していたリーフレットを手に取り、糸島市の財政状況を詳しく説明した上で「財政寸前、県下最悪の状況と書いてあるが、これは間違いだ。撤回してもらいたい」と応戦。佐藤氏は「財政が硬直化しているのは事実だ。問題とすべきは市政の方向性であり、財政の状況を市民に分かってもらうための表現だ」と反論した。
今回の討論における両氏の姿勢は対照的であった。松本氏は、これまでの行政経験を背景に細かいデータを示しながら具体的に政策を語った。ただ、現在進行中の施策について、「市議会の承認を得た」、「県の事業である」という言葉で正当性を主張しているあたり、市長としてのリーダーシップに疑問を感じるところがある。
対する佐藤氏は、民間の視点から今までの市政に対する疑問をぶつけ自身のビジョンを語った。ただし、全般的に具体性に欠け、会場の有権者に伝わりにくかったのではないかと思う。今までの市政に対する検証においても、今後どれほど具体的に追及していけるかが大きなポイントになるであろう。
なお、討論会の模様は録画されており、約1週間後、糸島青年会議所のホームページで公開される予定である。
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