業績低迷が続く老舗百貨店の井筒屋（北九州市）は１月９日、記者会見で経営立て直しに向けて、主要取引銀行の山口銀行や福岡銀行、みずほ銀行などの金融機関と借入金約367億円について、再度向こう１年間の返済猶予、および追加融資を受けることで合意したと発表した。
　中村眞人社長は経営責任を取って退任（５月下旬の株主総会）し、影山英雄執行役員が新社長に就く人事と、早期退職者の募集などの経営改善計画を実施して、態勢の立て直しを図ることになった。
　個人消費低迷による業績悪化を受けて、昨年、「久留米井筒屋」、「飯塚井筒屋」、「サロンド・井筒屋　Ｕ」（2007年、博多井筒屋の後継店として博多リバレイン出店）を閉店している。
　井筒屋への金融支援は富士銀行（現みずほ銀行）、山口銀行、福岡銀行の主力３行主導で行なっていたが、低迷する「ちまきや」（山口市）を「山口井筒屋」として引き継がせることにした山口銀行に対して、みずほ銀行と福岡銀行が井筒屋支援に距離を置くようになり、山口銀行の影響力が増してきたと言われる。
　山口井筒屋は一昨年11月オープンし、年商80億円（飲食は別）の経営計画を発表したのも束の間、昨年春には75億円に修正したが、実態は70億円を切る20％近い減収で計画から大きくかい離している。
　消費の一段の冷え込みなども重なり、井筒屋は2010年２月期連結決算の純利益は、１億円の黒字予想から一転、30億円の赤字に転落すると下方修正した。
　中村社長は「銀行の支援を得るためには、過去の経営の流れにけじめをつけることが必要と判断した」と述べているが、社長交代により金融機関との関係修復ができるかどうか、新社長の手腕が問われることになる。

【北山　譲】

*記事へのご意見はこちら