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未来トレンド分析シリーズ

米中両国で膨らむ巨大な経済バブルの行方(3)
未来トレンド分析シリーズ
2010年1月22日 08:40
国際未来科学研究所代表 浜田和幸

 アメリカの栄光はまさに地に落ちたといっても過言ではない。不幸の連鎖のように、アメリカの裏庭ともいうべきハイチで巨大地震が発生し、20万人を超える死者が出た。300万人もの被災者がボート難民となりアメリカ南部に押し寄せかねない。オバマ政権はブッシュ元大統領やクリントン元大統領まで総動員してハイチへの救援活動、募金活動を展開中であるが、本音は今でも60万人を超えるハイチからの難民をこれ以上受け入れたくないとの思いが強いようだ。

 一方の中国の状況はどうであろうか。アメリカ発の金融危機の大津波に各国が飲み込まれたなか、一人中国のみが年率10%近い経済成長を続けている。それを支えているのが大規模な公的資金を投入した内需拡大策である。2009年だけで5,860億ドルもの景気刺激策を導入した中国。GDPに占める割合は17.8%だ。アメリカが行った公的資金は同じ指標では5.7%に過ぎない。

 中国がこれだけ大規模な公的資金を注入できたのは世界最大の外貨保有国ならではのこと。その流れを受け、金融機関は住宅取得にも潤沢なローンを提供している。2009年、中国全体での住宅売買は198%の成長を遂げた。問題は住宅価格の高騰である。2009年11月、上海では68%、北京では66%、深センでは51%も値上りを記録。

 例えば、北京の標準的なアパートの値段は一般市民の年収の80倍にまで達している。以前であれば、年収の3倍ないし4倍で住宅取得が可能であったわけで、この異常な値上がりぶりには多くの国民が危機感を抱いている。明らかに不動産バブルと言えるだろう。温家宝首相は2009年12月、事態を重く受け止め、「不動産価格の急騰を放置するわけにはいかない」と異例の発言をし、不動産取得に際して50%の頭金を必要とするような法律の改正にも言及した。

 ここまで不動産価格が値上がりしている背景には中国独特の制度が影響している。特に地方政府の歳入の半分以上が不動産取得税から得られているという現状が災いしているといえよう。また、固定資産税がないため、住宅を投機目的で購入する富裕層が急増中である。そのため建設が進む住宅は高級志向が顕著で、新規着工件数の9割が一般の市民には望んでも手のでない高額な物件となっている。

 当然の帰結として、住宅件数は増えているものの、大半は住む人のいない空家状態である。一部の富裕層や党や政府の幹部たちが転売による値上がり益を求め、思惑買いを進めているのが現状だ。遅かれ早かれ、一般市民の怒りが爆発するに違いない。

(つづく)

【浜田 和幸(はまだ かずゆき)略歴】
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 国際未来科学研究所代表。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。

 ベストセラー『ヘッジファンド』(文春新書)、『快人エジソン』(日本経済新聞社)、『たかられる大国・日本』(祥伝社)をはじめ著書多数。最新刊は『ノーベル平和賞の虚構』(宝島社)。近刊には『オバマの仮面を剥ぐ』(光文社)、『食糧争奪戦争』(学研新書)、『石油の支配者』(文春新書)、『ウォーター・マネー:水資源大国・日本の逆襲』(光文社)、『国力会議:保守の底力が日本を一流にする』(祥伝社)、『北京五輪に群がる赤いハゲタカの罠』(祥伝社)、『団塊世代のアンチエイジング:平均寿命150歳時代の到来』(光文社)など。
 なお、『大恐慌以後の世界』(光文社)、『通貨バトルロワイアル』(集英社)、『未来ビジネスを読む』(光文社)は韓国、中国でもベストセラーとなった。『ウォーター・マネー:石油から水へ世界覇権戦争』(光文社)は台湾、中国でも注目を集めた。
 テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍中。「サンデー・スクランブル」「スーパーJチャンネル」「たけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「みのもんたの朝ズバ!」(TBS)「とくダネ!」(フジテレビ)「ミヤネ屋」(日本テレビ)など。また、ニッポン放送「テリー伊藤の乗ってけラジオ」、文化放送「竹村健一の世相」や「ラジオパンチ」にも頻繁に登場。山陰放送では毎週、月曜朝9時15分から「浜田和幸の世界情報探検隊」を放送中。
 その他、国連大学ミレニアム・プロジェクト委員、エネルギー問題研究会・研究委員、日本バイオベンチャー推進協会理事兼監査役、日本戦略研究フォーラム政策提言委員、国際情勢研究会座長等を務める。
 また、未来研究の第一人者として、政府機関、経済団体、地方公共団体等の長期ビジョン作りにコンサルタントとして関与している。

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