◇県の環境行政への疑問
―県の環境行政は、住民目線を欠いているように思われますか。
杉本 住民福祉にそぐわないような経済発展はありえません。そこを無視していくと、将来大きなツケが回ってきます。我々がここで生活しているのは、我々のごく当たり前の営みのなかで守られてきたものですが、それを狂わせてしまうのは問題があります。
本来、県が持つべき住民目線の行政がなされず、すべきことをしてこなかったという反省がなかったわけです。当初は県を相手取って裁判をしていましたが、裁判云々ではなく、心ある対応をお願いしたかった。それが政治的な判断のはずです。現時点で県の産廃行政というものは、私どもにとってあまり信頼できるものではありません。
―法整備がされておらず、県が見逃していたという話もありますが。
杉本 裁判の資料作りのなかで、マニフェストに記載された産業廃棄物の内容をチェックしました。すると、管理型や安定型が混じったものは混合物であって、安定型ではないのですが「安定型混合物」と書かれていました。「そういう書き方でいいのか」ということを厚生労働省に聞いたのですが、「それはだめだ」と回答されました。しかし、県はよいというわけです。「このように書かざるをえない」と説明するわけです。このように十分な法整備ができていない状況で民間に任せていること自体が、悪質な処分がまかり通るようなシステムを作っています。県が徹底して対策しようとすればできるはずですが、なぜかそれをしていません。
福岡県の産廃行政は後退しているように見受けられます。県に言わせれば、トップの問題のようです。トップが現場のことを良く分かっていないのです。今、我々にできることは、産廃場を作らせないことです。
以前、近くの小さな処分場で不法投棄が行なわれていました。それを、地元住民の通報で県が立ち入り検査したところ、不法投棄の現場を見つけました。そのとき県は、その現場を見たから指導を出して収束しましたが、もし見ていなかったら「証拠がない」といって何もしなかったわけです。もしこれを警察が見ていたら犯罪です。
このように、立場の違う人の判断によって、指導があったりそうでなかったりする。一部の公務員の方には、そういう体質があるようです。
【取材、文・構成:廣瀬 智久】
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