◇消火器から肥料へ、リン再利用技術の開発
農・工業用の石灰や薬品などの製造・卸販売を行なう兼定興産(株)は、期限切れの消火薬剤からリンを摘出する技術を開発、農業用の肥料への転用を開始している。
同社はもともと石灰などの卸販売会社。石灰以外のその他の薬品にも取り扱い範囲を広げていく過程で、焼却場の灰から重金属を固定する薬品や下水処理用の薬品など、しだいに環境・リサイクル方面に力を入れていくようになった。
同社が今回の開発に至った背景には、世界的なリン価格の高騰およびそれに伴う肥料価格の高騰がある。リンが高騰した原因としては、バブルの影響もあるが、世界的な食糧生産増加に伴う国際的な需要の増加が一番の要因として挙げられる。リンの最大の産出国である中国でも、自国の食糧増産に伴ってリンの輸出関税を引き上げるなど、市場のリン価格は従来の3倍近くまで跳ね上がった。
「肥料の原料となるリンの価格が高騰したことで、農家の方々が困られていました。そこから、期限切れの消火器のなかの薬剤を肥料へと転用できないかと考えました」と、同社代表取締役社長の野下兼司郎氏。
ただし、消火薬剤をそのまま肥料へと転用することはできない。消火薬剤に使われているリンは微細な粉末状だが、表面に撥水性の特殊なコーティングが施され、水に浮く性質が付加されている。肥料として使うためにはこの性質が問題となり、水に浮いてしまうと認可登録ができなくなってしまうのだ。
そこでこの問題の解決のため、同社とJAさが、肥料メーカー2社の計4社で、このコーティングの除去技術を開発。この技術については現在まだ特許申請中だが、これを用いて得られたリンを用いた肥料は、農水大臣の認可登録を受けている。
流れとしては、同社が有価で消火設備会社からリンを買い取り、異物を除去後に肥料メーカーにリンを納入。そこで肥料の原料として使用され、JAさがの組合員である農家に卸される仕組みとなっている。本来廃棄される消火薬剤の再利用となるので、市場のリンと比べて価格的には安定しており、性質に関しても遜色ないという。
「現在のところは、JAさがを通じた佐賀県の農家にのみ販売されています。今後特許が取れれば他のJAなどにも販路を広げていき、将来的には全国へと展開していきたいですね」と、野下氏は今後の展望について語ってくれた。
【坂田 憲治】
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兼定興産(株)
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