町村会の参事らが、同会の公金をだまし取り、県幹部らの接待に充てていたとされる裏金接待疑惑が、贈収賄事件に発展した。背景には「後期高齢者医療制度」の負担割合を軽くしたかった町村会側と、同制度の広域連合設立準備委員会会長だった県ナンバー2との癒着があった。
福岡県警は2日、中島孝之・前福岡県副知事を収賄容疑で、山本文男・全国町村会会(県町村会会長、添田町長)を贈賄の疑いでそれぞれ逮捕した。
福岡県では、75歳以上を対象として2008年から導入された「後期高齢者医療制度」の実施に向けて、06年から県内の市町村で構成する「福岡県後期高齢者医療広域連合」設立の準備が進んでいた。「後期高齢者医療広域連合」は、長寿医療制度(後期高齢者医療制度)」の運営主体で、都道府県単位で設立された特別地方公共団体。「福岡県後期高齢者医療広域連合」は、福岡県内の全市町村の議会の議決を経た上で県知事の許可を受け、07年3月に設立されている。中島容疑者は設立準備委員会の会長に就任し、市長会側と町村会側の意見調整を行ったとされるが、同連合の議員数をはじめ、人件費や運営費などに関して町村側有利な形に落ち着いたという。
中島容疑者には、同連合の設立、運営で町村側が市側よりも有利になるよう便宜を図り、見返りに山本容疑者から現金100万円を受け取った疑いが持たれている。後期高齢者医療制度が一部の人間の恣意で歪められた可能性が高い。
県警捜査本部は、贈賄側の山本容疑者から1月23、24の両日事情聴取。贈賄の事実について確証を得ていた模様だ。
一方、昨年12月に裏金接待の責任をとる形で辞任した中島容疑者は、その後公式にコメントすることもなく、姿さえ現していなかった。
全国知事会の会長を務める麻生渡知事の懐刀と言われた中島容疑者と、全国町村会の会長である山本容疑者の逮捕は、医療制度への信頼を失わしめたと同時に、地方分権の推進に大きな影を落とすことになった。
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