発想の転換と力の集結で200億堅守
上村建設(株) 代表取締役社長 上村 秀敏 氏
◇経営は「心理学」
―やはり今は、泥臭くやっていかなければ仕事はなかなか取れませんよね。
上村 美辞麗句で文化的な話をして仕事が取れるのであれば、血圧も上がりませんし一番楽でいいのですが、やはりそこは、たとえ嫌なことであろうとも言い続けてやっていかないと、言い続けてもなかなか動きませんから。
経営というのは、宣教師のようなものです。言い続けなければいけないんです。
―そこはなかなか報われませんけれども…(笑)。
上村 そうですよ、だから言い続けるしかないんです。これは、「経営を託す心」というか、ある意味で心理学の世界ですよ。相手の心理を読んで、それがどういう影響をおよぼしているかということを見極めることが、「経営の姿」になるわけですよね。ですから、大変難しいです。
ボーナスがどんどん減って、市場はデフレ。やはり何となくみんな疲弊してきて、「心理」が良い方向に展開しません。「金は使わないでおこう、旅行はしないでおこう、外食しないでおこう」…とにかくもう、そういうことばかり考えますから。
―いよいよ悪くしますね。
上村 たとえば、今度のインフルエンザの流行もそうです。私は随分前から予防について言っていますが、これだけ言い続けているにもかかわらず予防措置ができていない。経営でも同じことですよね。やはり心理学的に、「これはもう、会社は大変なんだ」という考え方にはなかなかならないんです。
ボーナス一つを取っても、社員の人たちの捕らえ方として、「なぜ私たちがボーナスを減額されなければいけないのか」と思われる人と、「こういう状況でもボーナスを出してくれるのか」と思う人とでは、その受け取り方や気持ちには、天と地との差があるわけです。
一番苦しいのは、お金はあるのにボーナスが払えないという「経営の苦しさ」なんです。税金として払わなければいけないお金なら、社員に払ったほうが当然いいですから。しかしそこで、いわゆる信賞必罰、けじめをきちんとつけなければなりません。それが一番辛いんです。
ですから役員にも言います。「あるのに出せない辛さがわかるか」、と。きちんと約束したことができれば、上乗せしてでも出せるんです。
―そこはメリハリをつけないと、当たり前に思われたら…。
上村 そうなんです。ボーナスというのは年間の所得の一部という捕らえ方が体に染み透ってしまっていますから。賞与というのは、「賞に与う(あたう)」ものですから、本来あるべき賞与の考え方からは随分と乖離していて、給料の延長線上になってしまっているわけです。
―長くなると、そうなってしまいますね。
上村 年金にしてもそうです。日航の例もそうでしたが、しかし「会社がなくなったらどうなるのかわかっているのか」ということなんですね。そこにも、現場とOBの乖離があります。やはり難しいところは、高齢社会になって年金に頼らなければいけないということはあるのでしょうが、そこはやはり、どこかでお互いが協調して会社を守りぬかなければならないと思います。自己主張ばかり言っていては、会社は持ちません。
―いまどき、利回り5%なんて稼げるわけがないじゃないですか。
上村 利回り5%なら、弊社のお金も預けたいですよ(苦笑)。
【文・構成:烏丸 哲人】
COMPANY INFORMATION
上村建設(株)
代表者:代表取締役社長 上村 秀敏
所在地:福岡市博多区住吉4-3-2
設 立:1959年2月
資本金:1億2,015万円
事業内容:総合建設業
年 商:(09/10)216億7,502万円
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