発想の転換と力の集結で200億堅守
上村建設(株) 代表取締役社長 上村 秀敏 氏
◇小さな仕事を積み上げることの大切さ
―前期は216億円の売上でした。
上村 流れ的には減収増益になっています。できれば増収増益という状態をキープしたかったのですが、時局が時局ですから、増益になっただけでも良かったと思います。いろいろな要因があって増益になったのですが、不良化したものの整理がある程度ついたこともありますね。
―最近ではデフレの影響も顕著になってきています。
上村 結局それは誰が起こしているかというと、当事者が起こすわけですよね。デフレスパイラルというのはそういうものです。安いものを作る会社の社員の人たちが、今度はスーパーに行って安いプライベートブランドの商品を買っている。そしたら、お金を使うところは限られてきます。安売り、安売りばかりでまわっていれば、とどのつまりに何があるかと言えば、要は適正な価格で良いものが食べられない、ということになってくるわけです。
それは、建築が一番顕著ではないですか。
―はっきりと原価があるのにですね。本当にとんでもないことです。
上村 そうですよ。『半値八掛け五割引』などという言葉がありますが、これだけみんなが苦労して原価を詰めてやっているにもかかわらず、人々は「建築は悪」、「コンクリートから人へ」などと言っている。こんなバカな話はないと思います。税金で生活している人たちにはわかりません。汗を流して、現場で怪我をして、仕事を取るノルマを与えられて、悩み続けて仕事に取り組んだ経験がない。だから「コンクリートから人へ」などといえるわけです。本当は「人からコンクリート」なんです。
―しかし、なぜ同じことをやっていて、たとえばマンション主体で伸ばしてきたような企業など、バブルやファンドでの失敗例をきちんと糧として活かしていこうとされないのでしょうかね。
上村 昨年倒産された高松組さんも、公共工事や病院建設などで余裕があったんですよね。少し偉そうに言うようですが、やはり5年先、10年先、今のような事態が続くかどうかすらわかりません。私の父が生きていれば、今の時代の状況を見てきっと驚くことでしょう。「ファンド」なんてまず経験していませんでしたからね。当たり前のことですが、昔のように良い単価では受注できません。
そうなると、もちろんJAさんの案件もひとつの柱としてやっていかなくてはなりませんが、それ以外のところも求めていかなければなりません。これからは、リニューアルや小規模の賃貸マンションなどは必ず伸びます。やはり最初に申し上げましたように、小石を拾い集めてきてそれを積み上げて固めていくように、小さな仕事でもしっかりと請けていくことが大切だと思っています。
【文・構成:烏丸 哲人】
COMPANY INFORMATION
上村建設(株)
代表者:代表取締役社長 上村 秀敏
所在地:福岡市博多区住吉4-3-2
設 立:1959年2月
資本金:1億2,015万円
事業内容:総合建設業
年 商:(09/10)216億7,502万円
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