実は、アメリカのロサンゼルスに、タイガー・ウッズを神様から遣わされたメシアとして崇める教会が存在していた。「ファースト・チャーチ・オブ・タイガー・ウッズ」と呼ばれる教会で「モーゼの十戒」にちなんだ「タイガー・ウッズの十戒」を掲げ、家族や地域を大事にしようという教えを広めていた。
ところが、信仰の対象とされていたウッズ本人が家庭崩壊につながるような行動を積み重ねていたことが明らかになり、この教会は存続していくことができなくなってしまった。一時は「将来の大統領も夢ではない」とまで期待された人物であるが、実に罪づくりなことをしてしまったと言えるだろう。
さらに言えば、タイガー・ウッズは自らが獲得した資金を元に「タイガー・ウッズ財団」を設立していた。この財団は、潤沢な資金をバックに10代の子どもたちに奨学金や教育支援を積極的に行なってきたことで知られる。1996年以来、1,000万人を超える若者が恩恵を受けてきた。しかし、本人のモラルを疑わせるようなスキャンダルの結果、その社会的存在が危機的状況に直面している。
同財団の目玉でもあった「タイガーズ・アクション・プラン」では8歳から17歳の子どもを対象にスポーツや教育を通じて人格育成プログラムを実施し、高い評価を得ていただけに、今回のスキャンダルに巻き込まれた最大の被害者になっている。
いずれにせよ、タイガー・ウッズのパーフェクトなイメージに多額の宣伝広告費を支払ってきた企業たちに、かつてない損害が生じている。03年からタイガー・ウッズを大々的に使ってきたアクセンチュア。タイガー・ウッズのお陰で、アンダーセン・コンサルティングからアクセンチュアへの社名変更がスムースに展開しはじめた矢先の事件。
同社のコマーシャルの83%にウッズは登場していた。この1年間でタイガー・ウッズへの宣伝広告費の支払い額は5,000万ドルを超えている。同社ではこの12月半ば、全世界で働く約18万人の従業員に対し、タイガー・ウッズのTシャツやマグカップ、帽子、ポスターなどすべての関連グッズを破棄するよう通達を出し、コマーシャル契約も中止することになった。ジレットなど他の大手企業も同様の決定を下した。
【浜田 和幸(はまだ かずゆき)略歴】
国際未来科学研究所代表。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。
ベストセラー『ヘッジファンド』(文春新書)、『快人エジソン』(日本経済新聞社)、『たかられる大国・日本』(祥伝社)をはじめ著書多数。最新刊は『ノーベル平和賞の虚構』(宝島社)。近刊には『オバマの仮面を剥ぐ』(光文社)、『食糧争奪戦争』(学研新書)、『石油の支配者』(文春新書)、『ウォーター・マネー:水資源大国・日本の逆襲』(光文社)、『国力会議:保守の底力が日本を一流にする』(祥伝社)、『北京五輪に群がる赤いハゲタカの罠』(祥伝社)、『団塊世代のアンチエイジング:平均寿命150歳時代の到来』(光文社)など。
なお、『大恐慌以後の世界』(光文社)、『通貨バトルロワイアル』(集英社)、『未来ビジネスを読む』(光文社)は韓国、中国でもベストセラーとなった。『ウォーター・マネー:石油から水へ世界覇権戦争』(光文社)は台湾、中国でも注目を集めた。
テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍中。「サンデー・スクランブル」「スーパーJチャンネル」「たけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「みのもんたの朝ズバ!」(TBS)「とくダネ!」(フジテレビ)「ミヤネ屋」(日本テレビ)など。また、ニッポン放送「テリー伊藤の乗ってけラジオ」、文化放送「竹村健一の世相」や「ラジオパンチ」にも頻繁に登場。山陰放送では毎週、月曜朝9時15分から「浜田和幸の世界情報探検隊」を放送中。
その他、国連大学ミレニアム・プロジェクト委員、エネルギー問題研究会・研究委員、日本バイオベンチャー推進協会理事兼監査役、日本戦略研究フォーラム政策提言委員、国際情勢研究会座長等を務める。
また、未来研究の第一人者として、政府機関、経済団体、地方公共団体等の長期ビジョン作りにコンサルタントとして関与している。
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