胸像は2体だった。
後期高齢者医療制度をめぐり、前福岡県副知事・中島孝之容疑者に町村会側が有利になるよう依頼し、見返りに100万円の現金を渡したとして贈賄容疑で逮捕された県町村会会長・山本文男容疑者(添田町長)。県町村会や「後期高齢者医療広域連合」が入居する福岡県自治会館(福岡市博多区)の玄関ロビーには、その山本容疑者の胸像が鎮座する(既報)。本人が存命中に胸像が作られることは珍しく「天皇」と言われた山本容疑者の慢心ぶりがうかがえる。
自治会館にある胸像と全く同じものが、山本容疑者が40年近く町長として君臨する添田町内に存在した。同容疑者の胸像があるのは町役場に程近い「オークホール」。公民館や「働く婦人の家」を併設した音楽を中心とする多目的ホールである。ホール玄関を入ると、広いロビーの一角に山本容疑者の胸像が据えられていた。胸像の両サイドには、向かって左に建立に協力したと見られる「有志」団体や個人名、右に山本容疑者の業績を称える銘盤。これだけでかなりのスペースを使っており、山本容疑者の「力」がしのばれる。知らない人間が見たら「物故した偉い人」としか思わないだろう。
不思議なのは、2体目の胸像について県町村会は「添田町に聞いて下さい」。同ホールの職員もなぜオークホールに山本容疑者の胸像があるのか経緯を知らないという。ここでは金額、建てられた経緯について知る者はいないという。2体の胸像は東京の業者が作製しており全く同じもの。製作にはかなりの金額がかかったと見られるが、誰に聞いても詳細が分からなかった。町村会絡みの事案は胸像建立までも謎だらけである。
権力に酔い、金で物事を動かした人物の胸像は、いつまで座り続けるのだろうか。いずれにしても、胸像の銘文に記された山本容疑者の姿は「虚像」だったということだ。
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