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特別取材

町村会贈収賄事件 県職員OBが語る前福岡県副知事・中島孝之容疑者(下)
特別取材
2010年2月11日 08:00

 ―今回の事件は、中島容疑者のケースワーカー時代の経験も影響しているのでしょうか?

 天野 そうかもしれません。ただし、彼だけが特別に行なっていたとは思えません。“長いものに巻かれる”という体質は、県庁のなかに連綿として続いています。長年続いていた地方課の慣習でもあり、彼の前任者も同様にやっていたのだと思います。生来の真面目さゆえに、同じやり方を中島さんは愚直に守ってきたのではないでしょうか。また、仮に組織に逆らおうとすれば、私のようにつまはじきにされた挙句、左遷されることもあります。たいていの人間は従うでしょう。結婚して、家庭を持つ身になればなおさらです。
 中島さんは、町村会との間に、他の誰よりも深く厚い関係を築き上げたと聞いています。疑いが持たれている町村会からの接待や収賄は、その延長線上だった可能性があります。
 私がいたころは、「本庁に5年にいると腐る」と言われていました。県庁という組織の実態を表した言葉です。おそらく今回の事件は、氷山の一角ではないかと思っています。

 ―そうした県庁の体質は変わることがないのでしょうか?

 天野 そうとは思いません。そもそも昔は、県と町村会が絶えず喧嘩をしていました。そうしてバランスを取ってきたのです。ところが、いつの間にか争いをせず癒着するようになっていたのです。
 今回の事件には、さまざまな問題を抱えている福岡県の社会構造も影響していると思います。福岡には、在日朝鮮人や部落の問題も依然として残っています。私は、決して在日朝鮮や部落の方が悪いとは思いません。彼らのなかにも良い人はたくさんいますし、私自身、親交を続けている方もいます。ただ、良い人がいれば悪い人もいる。いろんな人がいて社会を形成しているわけですから、思うようにはいきません。
 しかし、争い続けてもいけないし、癒着することもいけません。そうした極端な手段を取ることなく、上手く調整していかなければならないのです。副知事として、町村会との調整役を任されていた中島さんが、癒着の道を選んだとしたら残念ですが。


 中島容疑者の事件は彼個人の問題ではなく、福岡県庁の体質や、その背景にある複雑な社会構造が生みだしたものではないか、と天野氏は見ている。金銭の絡む癒着は行政を歪ませる原因にもなり、決して許されるものではない。言い方を変えれば、本当の信頼関係が構築できないからこそ、金銭で縛る必要が生じるのではないだろうか。
 その一方で、争い続けることが行政執行の停滞を招くこともある。地方分権が本格的に進むなか、今回の事件を教訓とし、適切な行政のあり方を考えていかなければならないように感じた。

(了)

【文・構成:県政取材班】

<プロフィール>
天野 康夫(あまの・やすお)氏
1949年2月12日、福岡市博多区住吉生まれ。京都大学農学部卒業後、福岡県庁に入庁。94年、45歳で退職し、以後さまざまな職業に就く。現在は自営業。「往生鯉太郎」のペンネームでの著書に『にっぽん脳民ものがたり』(櫂歌書房)がある。


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