不法投棄に関連した業者の逮捕や、それに関する行政の怠慢など、産業廃棄物の問題が後を絶たない。そこで、産業廃棄物処理場と農政問題に詳しい、民主党県議会議員の原竹岩海氏にお話をうかがった。政治の世界に身をおくきっかけとなった産廃問題から、日本の未来像にまで話が及んだインタビュー記事を全3回にわたって連載する。
<秘書から出馬。産廃問題に動く>
―政治の世界を志されたきっかけを教えてください。
原竹 県議会議員をする前は市議会議員、その前は県議会議員秘書をやっていました。県議会議員の秘書時代は同時に、市長の個人的な秘書もしておりましたので、結果的に県政と市政の中枢の両方を勉強できました。
アメリカでは州知事が大統領に引きあがりますが、日本でも地方に優秀な人材がいます。そのため、地方と国政を同等にしなければならないという気持ちがあります。地方の政治レベルを国政レベルの人たちが魅力を感じるようにしなければなりません。私は、県議会議員と市長の2つの秘書を通じて、地方の政治も大事なポジションであり、「地方政治を国政レベルにまで引き上げる必要がある」と自覚しました。
秘書を7年半勤め、市議会議員に立候補しました。その後、2期、3期とトップ当選し、その勢いで県議会議員となりました。私が市議会議員に就任する前に、地元の県営山神ダムの上流域に日本最大の産廃処理場が設置されました。総量およそ130万トン。『産廃山』と呼ばれるほどの廃棄物が捨てられたのです。その頃、「白い水が流れてきている」、「風向きで村に変なにおいがする、目がしみる、咳が止まらない」などの噂が流れ始めました。そして、1999年に産廃処分場内で水質検査中に3人が即死する事件が起きました。調べると、硫化水素ガスが大量に発生していたのです。人間の致死量は600~700ppmですが、その場所では計器が測定不可能となる15,000ppmが検出されました。有毒なガスが処分場内に滞留していたようです。
―県営山神ダムの産業廃棄物処理場の問題ですね。
原竹 はい。産廃場の下流域には、筑紫野市・小郡市・太宰府市の市民22万人もの人々が飲む生活用水の原水があります。将来にわたって住民に健康不安が増幅するということで、市議会で徹底的に対応することになりました。私はその当時、環境常任委員長をしていたのですが、産廃の事業や、設置許可・指導監督は県知事が所管をしているということがわかりました。これは県に厳重に忠告しなければならないと思いました。また、市民団体は「こんな水を飲ませるのか」と県に対して迫っており、地元の市議会としても看過できないという状況となりました。しかし、県は門前払いでした。県行政と地元の県議会議員で対処するといわれたのです。そこで、市議会議員と県議会議員には大きな壁があると感じました。また、県に市の担当者が話しに行くのですが、県と市では上下関係がはっきりしているのですね。一言も言葉を返しきれないのです。これはだめだと思い、市議会だけでもしっかりしなければならないと、市会議の全員協議会の中で緊急動議を出しました。「所管の委員長として、今新聞紙上で問題となっている産廃処理場による市民の健康不安について、市での対応では限界を感じる。よって議会内に、産業廃棄物に関する特別委員会の設置をお願い申し上げたい」と発言しました。
またその当時、県の産廃担当にさまざまな市民団体が来ていましたので、市民団体の声を一本化しました。「市役所と市議会、区長会、市民団体が一体となれば、県の厚い壁もきっと打ち破ることができる」と私は話しました。「失敗するかもしれないけどやってみましょう」ということになり、設立準備委員会の委員長を経て「県営山神ダム上流域産業廃棄物処理場対策連絡協議会」、通称「産廃連」を設立し、私が初代の事務局長に就任しました。
【文・構成:県政取材班】
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