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不況を生き抜く躍進企業

【不況を生き抜く躍進企業】(2) ~全日本食品(株)(下)
不況を生き抜く躍進企業
2010年2月15日 08:00

的確な顧客分析に基づいた「Z・FSP」もうすぐ始動
全日本食品(株) 代表取締役社長 齋藤 充弘 氏

◇Z・FSPで顧客の囲い込みへ

 ―今年は、御社が面白い取り組みをされるとうかがいました。

 齋藤 3年前からスタートしたこの「新・商品施策」は、文字通り商品からの切り口での店頭施策でしたが、今年はお客さまからの切り口として、カード会員に対するポイント還元やチラシ商品以外の優遇サービスを提供し、店舗の売上を左右する優良顧客の増加獲得を目指しています。我々は今年の4月から一部の店舗で、Z・FSP(全日食独自のフリークエント・ショッパーズ・プログラム)を導入します。

 ―Z・FSPとはどういうことですか?

 齋藤 今のお客さまは特売だからといって、買い置きをしません。スーパーに買物に来られている方は、多い方で月に20回ほど来られています。この方たちを弊社ではロイヤルカスタマーと呼び、売上の80%ほどを占めています。しかし、それだけで売上を伸ばすのは難しい。Z・FSPとはお客さまに対してポイントカードを発行して、買いたいときに買える土壌を作ります。
 たとえば、Aさんにはいつも購入している特定の牛乳を月2回買える権利を付けたり、Bさんにはお気に入りの食パンを月4回までは同じ価格で購入できる。ポイントカードを用いて、買えるシステムを作る。こんなものが安くなる。要は少なくなったときに買いに行けて、しかも、安く買えるという権利なんです。これにより、全日食の加盟店で月に10回買物をしていた人が、11回、12回と買物をすれば、それだけで売上高が上がります。4月以降から一部の店舗で始め、店頭のPOS(販売時点情報管理)システムを更新する必要があるため、2~3年以内に全店で導入したいと思っています。

 ―なるほど。個人用の特典付きのポイントカードで、囲い込みを行なわれるのですね。それではチラシは今後、打たなくなるのですか?

 齋藤 いや、チラシは打ちます。それは、店舗のお客さまは1年間で20%入れ替わるからです。定番商品については、ハイ&ローを基本とした販売戦略からの転換が成功したと考えますが、店舗に対する新規のお客さまの獲得はチラシ広告しかありません。昨年より本部で、特売チラシの企画・作成提案を行なっています。これにより、販促企画の実施率が大幅に増えました。

 ―チラシ効果には賛否両論ありますが、肯定派なんですね。

 齋藤 毎年2割が減ったままの状態だと、店舗の絶対客数は減ります。理想の店舗作りは地域住民が1万人いて、そのうちの2,000人が入れ替わり、その2,000人の20%がロイヤルカスタマーとなるのが理想。イギリスのテスコは15年前から始めているんです。これからは、どういうFSPを打つかが勝負になってくると思います。
 ポイントカードを我々独自の視点で分析すると、売上の構造、売上の上がる・下がる仕組みなどがよくわかります。現在、Z・FSPのシステム開発は完了し、今後は店舗に導入していく段階です。費用ですが、某大手コンビニで作成した金額が40億円といわれています。我々は、それのパッケージソフトを購入しているから安いです。今後は導入に際し、費用の大半は本部が負担します。そして加盟店にも一部負担していただきますが、国も負担してくださるそうです。国は購買数を上げていかないといけないからですね。

 ―九州地区についての、今後の展望と戦略などを教えてください。

 齋藤 現在、九州で約200店の加盟店があります。我々は九州独自の施策を作ってはおらず、北海道でも関西でも通用する全国共通の施策を持っています。共通の施策を持ちながら、それぞれの地域でお客さまが望む価格で売っていくということをしっかりとやっていくことなんです。  
 地域単位で中身は違っていて、九州では北と南で分けたりして、そういうマーケティングを分析する社員が本部に20人在籍しています。加盟店側に歩み寄っている考え方で、レギュラーチェーンよりもシステマティックにやっているつもりです。あと、加盟店には我々から商品を買わなくても、商品を止めることはありません。決して強制力というわけではなく、システムの確立ですね。我々は商売のプロセスを作っています。これにより加盟店では、とくに生鮮食料品の売上が2~3割上がっています。今後は、肉、魚の加工センター(パッケージセンター)なども各地に設立し、効率が良く、安価で納入できる物流体制を作っていきたいと思います。
 最後になりますが、我々はお客さまにとって、近くて、買いやすい価格で、新鮮な生鮮品を揃えているお店として、普段のお買い物に利用していただく地域密着の小売店を今後も目指していくことが、唯一の生き残り策だと考えております。

 ―本日はお忙しいなか、ありがとうございました。


◆◇◆ 取材後記 ◆◇◆
廃業寸前の店舗を建て直す

同社の取引先は、小規模で個人経営のスーパーが多い。なかにはスーパーのイロハも知らずに立ち上げた店舗もあり、開業当初は小売業の商流を知らないがために問屋の言うがままになって、商品を高く売りつけられて開業まもなく倒産寸前になるところもあった。しかし、同社の的確な営業アドバイスと商品供給もあって、開業から4期目を迎え、創業時の2倍以上の売上高を計上できるまでに成長した。「何度も辞めようと思ったが、その存在はとても心強かった」と、このスーパーの経営者は語っている。廃業寸前の店舗を蘇らせた、全日食チェーンの底力を感じさせるエピソードである。

(了)

【聞き手、文・構成:矢野 寛之】

COMPANY INFORMATION
全日本食品(株)
代 表:齋藤 充弘
所在地:東京都足立区入谷6-2-2
資本金:17億6,000万円
加盟店数:1,800店(2009年8月現在)
年 商:(09/8)約979億円
URL:http://www.zchain.co.jp/


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