こうした状況を受け、2010年には新たな金融商品が市場にデビューすることになるだろう。それは、タイガー・ウッズのようなスーパーヒーローを使って企業イメージを高めていた企業が突然のイメージダウンにより、そのブランドが大きな損害を受けた場合に保険でカバーしようとする新商品である。
デウィット・スターン社と言えば110年の歴史を誇るアメリカの保険ブローカー。同社はすでに今回のタイガー・ウッズ騒動にヒントを得て、今後もCMに起用していたスターやセレブがスキャンダル等により評判が失墜したことにより企業イメージが棄損された場合に備える保険を開発し、2010年早々に売り出す計画を進めている。
同社の強みはこれまでも企業の経営者、あるいは社員が様々な不祥事を引き起こし、損害が発生した場合にも、その損失をカバーする保険で大きな利益を得てきたことにある。D&O保険と呼ばれる商品に他ならない。今回最も大きな損失を被ったといわれるアクセンチュアなどが、今後は有望な顧客になりそうだ。
デウィット・スターン社の新しい保険商品は、事前にコマーシャルに使う人物のライフスタイルを慎重に調査し、リスク管理を徹底させるのが売り物。万が一、想定外の深刻な問題が発生した場合にも、ダメージコントロールのためのサポートも行う内容になっている。
同社はさらにカバーする対象を一般の個人にも広げようと考えている。なぜなら、タイガー・ウッズのような有名人でなくとも、一般の人々がインターネット上で根拠のない誹謗中傷によって個人生活や社会的評価がダメージを受けるような事例が急増しているためである。
いずれにせよ、世界のスーパースターがもたらした不倫騒動は意外なところで新たなビジネスを生み出す可能性をもたらしている。明日は我が身とならぬよう、我々一般人も行動には注意をしたいものだ。ちょっとした気の緩みが命取りになりかねない。ネット社会にはそんな落とし穴が至る所に潜んでいるのだから。
とはいえ、今年は寅年。タイガーとしては何としても復活の兆しを掴みたいところであろう。大地震に見舞われたハイチに対して義捐金を3億円寄付したのも、リカバリーショットの第一打を狙ってのこと。残念ながら、まだバンカーから這い上がることはできていないようだ。
【浜田 和幸(はまだ かずゆき)略歴】
国際未来科学研究所代表。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。
ベストセラー『ヘッジファンド』(文春新書)、『快人エジソン』(日本経済新聞社)、『たかられる大国・日本』(祥伝社)をはじめ著書多数。最新刊は『ノーベル平和賞の虚構』(宝島社)。近刊には『オバマの仮面を剥ぐ』(光文社)、『食糧争奪戦争』(学研新書)、『石油の支配者』(文春新書)、『ウォーター・マネー:水資源大国・日本の逆襲』(光文社)、『国力会議:保守の底力が日本を一流にする』(祥伝社)、『北京五輪に群がる赤いハゲタカの罠』(祥伝社)、『団塊世代のアンチエイジング:平均寿命150歳時代の到来』(光文社)など。
なお、『大恐慌以後の世界』(光文社)、『通貨バトルロワイアル』(集英社)、『未来ビジネスを読む』(光文社)は韓国、中国でもベストセラーとなった。『ウォーター・マネー:石油から水へ世界覇権戦争』(光文社)は台湾、中国でも注目を集めた。
テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍中。「サンデー・スクランブル」「スーパーJチャンネル」「たけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「みのもんたの朝ズバ!」(TBS)「とくダネ!」(フジテレビ)「ミヤネ屋」(日本テレビ)など。また、ニッポン放送「テリー伊藤の乗ってけラジオ」、文化放送「竹村健一の世相」や「ラジオパンチ」にも頻繁に登場。山陰放送では毎週、月曜朝9時15分から「浜田和幸の世界情報探検隊」を放送中。
その他、国連大学ミレニアム・プロジェクト委員、エネルギー問題研究会・研究委員、日本バイオベンチャー推進協会理事兼監査役、日本戦略研究フォーラム政策提言委員、国際情勢研究会座長等を務める。
また、未来研究の第一人者として、政府機関、経済団体、地方公共団体等の長期ビジョン作りにコンサルタントとして関与している。
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