国土交通省九州地方整備局(以下、九地整)発注の工事に、またしても疑問が浮上した。
宮崎県内における九地整発注事業のうち、09年2月から3月にかけての工事を、1社が集中的に落札するという事態が起こっていたのだ。同時期の九地整「宮崎河川国道事務所」と「延岡河川国道事務所」の発注工事は合計66件。このうち16件を1社で受注している。24%の高率である。「宮崎河川国道事務所」だけで見ると44件中13件、約30%。同事務所の2月発注分に限れば17件中7件で約40%の工事を1社が独占していた。
その1社とは宮崎県宮崎市に本社を置く「志多組」である。独占受注の背景を探る。
「志多組」は、昭和6年創業の地場大手ゼネコンである。08年8月、同社は278億円の負債を抱え、民事再生法の適用を申請した。民事再生適用申請にあたって同社が公表したお知らせには、次のように記されている。
(以下、同社「民事再生決定のお知らせ」から抜粋)
《バブル経済崩壊以降、民間建設需要の著しい低下により、特に建築部門における受注が困難になり、東京支店を中心として首都圏における受注を大幅に拡大したものの、原材料価格の高止まりや建築基準法改正による耐震性の増大等によりコストが上昇しました。加えて、地価高騰等による建設費削減圧力により、建築工事の採算性が低下したこと、公共投資による土木工事についても、近年の公共事業離れの傾向や官公庁の財政事情等を理由に案件数が減少する中、殊宮崎県における官製談合事件を受けての入落札条件の厳格化の結果、財務状態は悪化の一途を辿りました。このような厳しい経営環境の中、本年6月に入り、複数の取引先の破産により請負代金債権約25億円が焦げ付く事態が発生し、これが明るみになった同月以降は資金繰りが急激に悪化することとなりました。そこで、このままでは今後の債務の支払を正常に行うことができないと判断し、やむを得ず、民事再生手続開始の申立てに至ったものであります》
この後、同年12月に東京地裁へ再生計画案を提出。翌09年2月には同地裁が再生計画の認可を決定する。再生計画の確定は同年3月である。
「志多組」集中落札に対する第1の疑問は、再生計画途中の同社が、なぜ多くの工事を受注できたのか、という点である。
(つづく)
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