<名誉欲による破産>
「天神ニーズ歯科クリニック」の突然の経営破綻から、数週間が過ぎた。Net-IBで一報を流したところ、数多くの問い合わせが寄せられた。そのなかでも多かったのは、「インプラント業界は飽和状態で、どこも経営が苦しいのではないか」という疑問である。
たしかに福岡市内にはインプラントを専門とするクリニックの数が多い。福岡市内だけでも25も存在する(タウンページ調べ)。過当競争になっている感は否めない。
しかしその中で、不景気に負けず懸命に頑張っているところも多い。同クリニックの破綻だけを見て、業界を一括りにしてはなるまい。
今回、Net-IBで天神ニーズ歯科クリニックについての連載を組むことになったのは、地元メディアでの度々取り上げられていた同クリニックの中村誠、優子夫妻が話題の人であったことに加え、同クリニックの技術が非常に優秀だったという関係者の声に疑問を感じたからである。
調べてみると、多くの債権者が口を揃えて言うのが、「人としてどうか…」ということだった。
「普通に仕事をして普通に生活していれば、絶対に潰れることはなかった。これは“名誉欲”の高まりによる破綻です。絶対に許せません」とある債権者は語る。同クリニックは、約3億2,000万円の負債を抱えて自己破産したが、これまでの中村夫妻の派手な生活を知っている債権者が、連名で債権の免債を認めないとする申し立てを福岡地裁に提出する動きを見せている。普通の暮らしをしていれば経営には特段の問題がなかったはずだというのだ。
ある債権者は「夫婦で歯科医師なのですから、医師免許があれば勤務医としてこれからの残りの人生でも充分な収入が得られるはずです。新天地で頑張ってお金を稼ぎ、反省して“慎ましく”生活すれば、必ず完済できます。絶対に債権放棄は認めません」と憤る。
これほどまでに債権者を頑なにさせる“名誉欲”とは、どのようなものだったのだろう。
(つづく)
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