2月12日、ついにHISがハウステンボスへの経営支援に関する基本合意書を管財人と締結すると発表した。年間約8億円の固定資産税の相当額を10年間交付する減免策や、施設の老朽化の追加負担を佐世保市に求めない代わりに、経営からの即時撤退の容認を合意文書に明記するといった、支援への前提条件は一応クリアしたと言えよう。
「理想案」の段階
野村PFによる福岡経済界への支援要請が明らかとなった昨年7月から始まった一連の問題は、一応一区切りついたことになる。とはいえ、課題は山積している。とくに注視しておかなければならないのが、「再生へのグランドデザイン」だ。
「これから注目すべきは支援の具体的内容」と元役員A氏は語る。「地元ではHIS支援は歓迎ムードだと感じる。従業員たちもホッとしているようだ。今回は野村PFのときみたいに多くの選択肢があるわけではなく、1か0だった。関係者は長く暗いトンネルにいたような気分だっただろう」(A氏)という。
それもそのはず、ここに至るまでには多くの紆余曲折があった。その過程については「会社更生計画認定から6年余 混迷続けるハウステンボスの行方」(I・B2009年7月23日号)、「野村PFと福岡経済界の溝 ハウステンボスの行く末は」(I・B同10月1日号)、「転機迎えたハウステンボス経営 期待されるHIS主導の再建」(I・B同11月26日号)の特集記事を始め、Net-IBで「ハウステンボス・ウォッチング」というコーナーを設けて現在までに15回連載してきた。
そのなかで、A氏の言も借りて「理想案」として、「HISが主導で集客力を高めるマーケティングを行ない、国内外からの誘客に努める。福岡経済界の企業からは、社員旅行や研修旅行などでハウステンボスを利用し、側面支援する。各施設は企業や個人が買い取るかもしくは賃借し、全体を一個の『街』にしていく」という提言もした。
当然、いろいろな人々がいろいろな「理想案」を持っているだろう。たとえば、08年5月に長崎県佐世保市など7市、西九州の経済団体を中心に発足した西九州統合型リゾート研究会が、「西九州統合型リゾート構想 地方再生型カジノ導入の意義とビジョン」という報告書を取りまとめ、約500億円を投じてハウステンボス内にカジノホテルを建設するという「理想案」もあった。
これについては頓挫しており、現段階でさまざまな「理想案」を包括するグランドデザインはなく、後述する澤田会長の発言も「理想案」でしかない。
【大根田康介】
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