中洲を日夜パトロールしている福岡県警博多署。その署長によると、「中洲における暴力団関連店は140店、賭博店は20店、客引きは40人ぐらいいる」という。暴力団関連店とは、暴力団が直接的に経営、もしくは人を介して経営し、収入源としている店のことである。業種で言えば、いわゆる飲み屋(ラウンジ、クラブ、スナック)だ。
そう聞くと、中洲は何だか物騒な町だと思えてくる。まず頭に浮かぶのは、"ぼったくり"被害への心配だろう。とはいえ、荒っぽい手口で客から金をむしり取っていたイケイケドンドンのひと昔前とは違い、今はどちらかと言えば"おとなしく"なっている。表向きはもちろん、中身(営業スタイル)も一般人が経営している店と同じというケースが増えているのではないだろうか。
客も知らずに利用し、フタを開けてみると「実は暴力団関係者が経営していた」ということが多いような気がする。警察による取締りが厳しくなり、ひとたび法に触れるような営業をすれば、厳しい処分を受ける。貴重な収入源を失うことになるからだ。
中洲がある福岡県においては、4月1日より『暴力団排除条例』が施行される。その主な目的は"暴力団の資金源を断つ"こと。食い扶持を奪う。戦国時代で言えば、兵糧攻めである。同条例には、一般人が暴力団と知りながら利益供与をした場合にも罰則が設けられているのだ。
以前、少し触れたが恥ずかしながら小生は、ぼったくりの被害に何度かあっている。中洲では、通称"タケノコ"と呼ばれる手口で痛い目にあった。料金は前払いと聞いて店に入ったにもかかわらず、「そんなことは知らない」というスタッフが現れる。受付で払った料金は、たしか3千円程度だった。
さらに、店内では細かいサービス(内容についてはご想像下さい)ごとに法外な料金が設定されている。フトコロ具合を気にせず他店と同様に遊べば、合計ウン万円という法外な料金が請求される。タケノコの皮を一枚一枚めくるごとに料金をとられるということだ。
もっと豪快な手口もあった。単純に単価が高いというパターンだ。最初のセット料金は3千円程度。そこらへんは"タケノコ"と同じ。店内の内装も地味な作りであり、たいていの人はここで安心する。「はじめての店だけど良心的だなあ」と。
しかし、何気にテーブルに置かれ、飲み放題になっているブランデーのボトルが1本3万円。横に座ったホステスが、「このお菓子大好きなの」と言って、ボリボリとむさぼり食っていたポッキーが"1本200円"もする。そして、同じくホステスが浴びるように飲むカクテルが1杯5千円。万事こんな感じである。店の中では、とてつもないインフレが起きているのである。
そして、多額の料金を請求されるお会計の際には、先ほどまで笑顔がステキだったマスターが、仁王様のような顔になって威圧してくる。どんなに酒を飲んでいても酔いは一瞬でさめてしまう。
被害者のひとりとしてアドバイス。両手口に共通しているのは、客引きが店へ案内をするということ。中洲においては、路上の客引き行為は禁止されている。それをあえてやっている輩が案内する店というものがどういうものか。"リスクが高い"ということは言わずもがなである。
取締りは警察に期待するとして、最低限、自分の身は自分で守れるようにしておこう。
(つづく)
長丘 萬月(ながおか まんげつ)
1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。
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