一方で「これだけリーズナブルな一戸建ての家(色々とオプションを付ければリーズナブルでは無いのだが)が数多く出ており、大量生産的な住空間に対して顧客側はどう見ているのか?低コスト住宅を否定するつもりはないが、顧客もそれ相応に住宅に関して勉強している。また情報も簡単に手に入る。より高品質な家をより手頃なコストで提供できればベストであるが、そう簡単には建てられない。住まいに限らずトレンドのサイクルとして、昨今のデフレ時代だからこそ“モノを大切にする”という心の部分が今後ますますクローズアップされるのではないだろうか。住まいにおいても購買する側は、昔のように長く住める家を所有する財力で求める時代になってくる。車のように数年経過して乗り換えを繰り返すことではなく、後世代々の人々まで住める家を求める」とある建築関係者は語る。
しかし「長く住める家を造ることを推進すると、あまり良い顔をしないハウスビルダーも存在する。年間竣工の棟数が減るからだ。分かってはいるものの商売を考え算盤を弾くと、『どうなのか…』というジレンマを感じる」と続ける。
一念発起して念願のマイホームを新たに建てる。いくら安価でも数千万円のコストが掛かる。購入側の様々な想いが募っていることであろう。
だが、現実家を建ててからの諸問題が後を絶たない。雨漏り、床の傾き、ハウスシック、カビ発生、地盤の沈下など…。また問題が発生した時の改善に対しても同様で、一時的な対処しかしない、法外な施工代金の請求など、不快な思いをして、追加コストが掛かってしまう事例は例を挙げるときりが無い。ユーザー側が勉強して知識が高まっているものの、施工・販売側には敵わない。
住まいに対する価値観は、各人で異なる。当然である。よってハウスビルダーは購入側に対して真摯に対応することである。設計から竣工そしてアフターフォローまで各人に対して顧客管理する。建てようとする時に、その家のメリット・デメリットをきちんと事前に話す。上面だけの話では駄目である。
またユーザー側も、遠慮せず臆することなく住まいに対する考え、不安、疑問点をぶつけるべきである。何から何まで“全部お任せ”は非常に危険だ。それはたとえ昔からよく知っている、懇意にしているハウスビルダーであってもだ(このケースでの後々のトラブルが多発していることが多いという)。
専門家並みの知識をつけるのでない。先ずは「雨漏りが無いように。地盤が沈まないように。カビが発生しないように…」など想定される疑問・不安が起こらないように細かく精査して、価格に関係なく気持ちよく納得して住めるように、志向しなければならない。そうすることで、ユーザー側の空間などのこだわりへ行き着くのではないのだろうか。
【河原 清明】
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