<最前線は戦意喪失>
40歳手前の記者に電話で意地悪な質問をした。「夏過ぎには希望対象者を募ると聞くが、貴方は応ずるつもりか?」と切り込んだのだ。「昨年からその噂は出ては消えているが―」とその記者はいぶかしる。
そこで、「君みたいな地方に飛ばされているものには情報が流れてこないよ。これは中央のホットな情報だ。ところで40歳の人が希望退職に応じたら1本は貰うだろう。どうする。決断するチャンスじゃないか。俺なら金を握る方を選ぶね」と挑発した。
「1本とは1億円のことだね。昔なら1億円出たかもしれないが、さあ、どうだろう。今の経営状態では出るかどうかわからないよ。実際に条件をみないと何とも論評できないね」と答えたが、いつもと違って歯切れが悪い。
「しかし、さあ、君に1億円渡して辞めてもらえれば、会社にとってみれば安いコストだよね。60歳まで20年間働いたら、平均年収を1,500万円として計算すると3億円払わなければならない。1億円で打ち切りとなれば会社としてみればハッピーだからね」と茶化した。
この記者の話によると、情報収集最前線は非常に戦意喪失状態であるそうだ。経費削減は取材にまで及んでいる。かつて、タクシーを使い放題に使いまくって現場に飛んで行くのは大手新聞社の特権であった。記者たちもそうすることでエリート意識に自覚し、仕事に燃えていた。
だが、世間の一部では「何さまのつもりだ」という批判の声もあった。東京での話だが、ごくわずかではあるが、頭に乗った不埒な記者のなかには、銀座で豪遊して深夜、自宅まで2万円を支払い、タクシーで帰っていた者もいたという。
一般記者にまで交通費を惜しみなく散財させていたのは儲かっていた証なのだが―。今では、タクシーチケットの使用は廃止され、実費精算が求められている。首都圏での深夜取材は最終電車までに限定されるようになったという。
電話相手の記者は「だから最近、本当の裏を取れる取材が難しくなった」と言い訳した。本質を外れた弁解である。そして、この記者は最後をこう結ぶ。
「まあ、希望退職の条件をみて決断するか」と。
<組織改善は無限にある>
前回、記述したとおり、「広告収入が500億円減った」ことを頭に叩き込んで新聞を眺めた。「無い!!」。金になっているだろう広告が無い。目立つのは出版紹介だが、これでは金にならない。旅行のコマーシャルも目立つが、これも金額面ではたかが知れている。
そして、2009年広告動向が発表された。新聞広告総金額がネット広告に圧倒されているのである。時代に流れには逆らうことはできないのか!!
新聞会社の組織改革の着手には、すべきことが山積している。50歳を過ぎた暇人が社内にはゴロゴロしており、新聞を読むことが日課になっている状況にはただ驚くばかりだ。そんな新聞社が、社説では「大切な地球を守るために環境エネルギーの有効活用を!」と論陣を張っている。
現実はちょっと可笑しいよ。社内の人材資源を浪費している事実、再利用の無知に関してはどう考えているのだろうか。彼らのキャリアを活かし、地方支局、通信員、専門記者として活用すれば良いものを、活用するのが遅すぎてなまくらにしてしまっている。
工場要員でも社員なら、やはり年収1,000万円を超えた高給取りは普通にいる。ここにもメスを入れたならばどうだろうか。考えれば無限の改革の余地はある。これができなければ経営ではない。
前回の記事を見た読者から20通のメールが来た。そのなかに『ある新聞記者が、年収ベースで200万の減収になった』という内容に対し、「一体、いくらの年収か?」という質問があった。
お答えしましょう。“1,400万円”です。
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