天国か地獄か
澤田会長は現時点で、コールセンターの誘致による雇用創出などいくつかの提案をしている。なかでも目を引くのが、入場無料エリアの拡大と「アジア最大」と自負するアウトレットモールの無料エリアへの誘致だ。鳥栖プレミアム・アウトレットをしのぐ200店舗の誘致を打ち出した。
今回の件について、内情を知る人物B氏は冷ややかにこう語る。「たしかにHISは損益収支や投資利回りなど、机上ではかなりシミュレーションしているだろう。しかし、今回の支援表明は、何よりも『ハウステンボスの閉園(=破産)を回避する』という最優先事項を解決するためのもの。出資についても、各社の決算に影響を与える持分法適用会社にならないよう案分されたものだが、実質的には九州電力の力が強い」。
たしかに、九州電力の会長である松尾新吾氏は佐世保市出身ということもあり、今回の件ではかなり尽力していたようだ。また、電気は施設のインフラにおいて重要な役割を果たすもので、そうした点においても同社の力は不可欠だろう。
「さらに言えば、澤田会長が今描いているのは感覚的なもので、本格的なグランドデザイン、出口戦略はこれからだ。こうした広大なテーマパークに関しては、優秀なプロジェクトマネージャーがいなければうまくいかない。ところが、HTB規模の施設を手掛けられるのは日本でも5人くらいしかいないのではないか。今回はあくまで基本合意で、他の旅行代理店から『なぜHISなのか』といぶかる声もあるようだ。これからまだまだひと悶着ある可能性は十分にある」とB氏。
トンネルを抜けて明るい兆しは見えたものの、その先は天国か地獄か―これからその真価が問われることになる。
【大根田康介】
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