2009年12月24日のクリスマスイブ、福岡・今泉にある天神プレイス売買をめぐる民事訴訟が提起された。開発主体であるアーム・レポの手から健康食品の通信販売で有名なやずやの手に移ったというニュースは、この年のイルミネーションの光をより一層明るくするはずだった。しかし、逆に売買の舞台裏の闇を表にさらけだすことになろうとは、誰が想像しただろうか。
つまずいた売買契約
もともと、天神プレイスの地(福岡市中央区今泉1-7-1)は、1992年4月に倒産したフクニチ新聞社の跡地だった。その後、同じく倒産した東峰住宅産業(当時:福岡市博多区)の手を経て独立行政法人都市再生機構(UR)が2001年3月12日に購入した。「この土地の有効な活用方法はないか」―今泉地区再開発プロジェクトを推進していたURは一計を案じ、都市開発企画の公開コンペをした。
87年11月に設立し、福岡地区で中堅のデベロッパーに成長していたアーム・レポの代表である田中浩和氏は、「何とかしてこの土地を福岡都心のオアシスにしたい」と、大切に温めてきた想いを企画化し応募。見事に開発する権利を勝ち取り、05年3月31日、URとの間で50年定期借地権設定契約を締結し、ホテル・レジデンス・サービスアパートメントが融合した都心型複合施設「天神プレイス」誕生への道が始まった。
これを「都市再生の不動産総合プロデュース事業」と位置付け、単なる箱物を作るのではなく街と調和し活性化させる施設を目指していた田中氏。それを具現化すべく、06年7月19日、大成建設がアーム・レポから天神プレイスの建築を約45億円(その後、修正・追加工事で約46.7億円に修正)で請け負って、08年5月9日に竣工引き渡しを完了した。永い歳月を要した一大プロジェクトとなった。
完成より少し前の07年度、福岡は不動産ミニバブルに沸いていた。中央大手、外資系による「売れよ買えよ」の攻勢で、西通りでは坪4,000万円とも言われる地価高騰が起こり、今泉地区も西通りよりは緩やかながらも商業施設建設や不動産売買が相次いだ。
アーム・レポもご多分に漏れず、出口戦略として外資系ファンド・セキュアード・キャピタル・ジャパンの子会社SCJインベストマネジメントに信託受益権を売却することを考えていた。予定価格は約87億円と言われていたが、折悪しくサブプライム問題やリーマンショックなどで世界的に経済状況が悪化。SCJは約53億円まで減額を求め、またアーム・レポの資産状況やテナント入居状況などにクレームをつけ買い取りを引き延ばしたとも聞かれ、結局この売買は実現しなかった。
【大根田 康介】
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