(3)結論
(Ⅰ)大成建設を経由せずに直接移転登記がなされているのは、第三者のためにする契約の方法を採用したことによるもの。アーム・レポとやずやHDの間に直接の売買契約があったからではない。
(Ⅱ)大成建設が損失を被るリスクがあったとしても代物弁済を選択したのは、アーム・レポが倒産した場合、相当額の請負代金回収が遅れるという事態を回避する必要があったため。担保権を有していた大成建設が解除に同意しなかった以上、アーム・レポとやずやHDとの間に売買契約が締結される見込みはなかった。
(Ⅲ)代物弁済が合意されたことでアーム・レポとやずやHDの売買契約が締結されなくなってしまったという関係にはない。代物弁済についてアークエステートの仲介行為の影響はまったくない。さらに売買契約代金の違いを見ても、アーム・レポとやずやHDの間に売買契約が締結されたと言えるような状況にはない。
(Ⅳ)大成建設が購入に要した額は約46.5億円、保証金約4.2億円に加えてアーム・レポのリーシング活動の報酬金として4,000万円のほか、アーム・レポの第三者に対する請負代金債務2.1億円の債務引き受けまで行なっている。これに対し、やずやHDの購入価格は約40億円と保証金約4.2億円のみで、差額は約9億円にのぼる。
(Ⅴ)以上のようなことから、天神プレイスに関してアーム・レポとやずやとの間で売買契約が締結される見込みがなかった以上、アークエステートの報酬請求権が実現することはなく、大成建設がアーム・レポから天神プレイスを譲渡されたことで報酬請求権を侵害することはない。
【大根田 康介】
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