<相乗効果により両社の飛躍を期待>
―シノケンは出口を確保して、御社は物件を確保するという、双方にとってメリットがあるということですね。
原田 その通りです。ただ、これまでと同じような取引ですので、それだけでは今回の提携の意味はないかも知れません。今回の資本・業務提携で、お互いが腹をオープンにして、裸の付き合いというか、全てをさらけ出してやるという部分で大きな意味があると思います。シノケンさんは上場企業であり、首都圏における事業基盤も確立できていることから、我々が知りえない情報を持っている部分もありますし、逆に我々は販売と管理の点では他所に引けを取らないと自負していますので、1+1が3や4になればいいと思っています。また、そうなると確信しています。
―一部では「火中の栗を拾わなくても…」という話もありましたが。
原田 そうではありません。このままでは、我々の業界で5年、10年後に果たして生き残れるかというと、不安はあります。資金調達や開発、販売に管理など、デベロッパーとしてクリアしなければいけない問題は山積みされていますし、今後ますます厳しくなる可能性もあります。
しかし、シノケンさんは上場企業ですし、資金調達の点では我々より勝っています。開発の点でもそうです。ただ、販売の点では我々のほうが勝っているというか、負けていないという思いはあります。それなら、お互いが得意とする部分に力を入れてやっていくことで、さらに発展・飛躍することができると思っています。
<中国人への販売など活動範囲が拡大できる>
―シノケンは12月に、NISグループとの共同出資で、中国で不動産仲介や不動産コンサルティングを手がける「康申房産経紀上海有限公司」の100%親会社で持株会社である「佳勝香港有限公司」の株式を取得して両社を子会社化しましたが、アジア戦略についてはどうですか。
原田 現在も、外国人の方々の不動産や住まいに対する関心は高いんです。しかし、現状では現金決済できるような一部の富裕層にしか売ることができませんし、方法もありませんでした。シノケンさんも数年前から中国への進出を行なっていたのですが、これまでは中国人投資家の日本不動産への投資については、ローンの組成が非常に難しかったんです。
今回、シノケングループで、ローンの組成、販売からその後の賃貸管理まで一括して不動産投資の提案ができる体制が整えられたことは、我々にとってもチャンスだと思います。販売チャンネルが増えるわけですからね。
―シノケンは、2006年から中国ビジネスをやっていましたからね。
原田 シノケングループの中国法人が、現地での物件販売の手続を行なうことで中国人投資家の便宜を図ることができ、需要の掘り起こしもあると思います。シノケンさんは、中国不動産市場に精通した社員もいますし、基盤は構築されているようです。
それと、シノケングループでは、自社で販売する投資用物件を購入する、中国人向けローンの取り扱いも始めています。通常、金融機関では永住許可を受けていないとローンを組めないことが多いのですが、外国人登録証があればローンを組むことができます。自社で融資することで、永住権はないけれど不動産投資を行ないたいという日本在住の中国人が購入できるわけです。ローンの対象となるのは、シノケンさんが福岡県や東京都などで販売する投資用分譲マンションと木造アパートで、分譲マンションが1戸2,000万円程度で、2~3割の頭金を用意すればローンが組めるようです。中国人の方が買いたいという話は、営業からも聞いていましたし、この方面へも販売できることで、今後はこの方面でも期待できると思っています。
―中国人の富裕層に、不動産を買いたいという人は多いですからね。日商ハーモニーさんとの関係はどうなりますか。
原田 基本的には、東京方面が日商ハーモニーさんで、福岡は我々というかたちですが、お互いが競争というか、励みになると思います。場所は違いますが、同じワンルーム販売という土俵ですからね。そうして、お互いが切磋琢磨することによる、相乗効果も期待できるのではないでしょうか。
それと、先ほどの中国人向けの販売では、今の販売方法のままでは将来厳しくなるという考えを持っている営業もいると思います。そこで、営業にひとつでも多くのチャンネルを持たせることで、販売先が広がって希望が持てるのは良いことだと思います。
(つづく)
【文・構成:石崎 浩一郎】
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら