「糸島市」誕生にともなう14日の糸島市長選挙で、無所属とはいえ、事実上自民・公明が支援した松本嶺男・旧前原市長(65)が当選した。昨年11月の筑後市長選、今年1月の久留米市長選挙、そして今回の糸島市長選挙と、たて続けに自民党が推す候補が勝利したことになる(久留米市長選は民主も相乗り)。それぞれの選挙では、自民党県議団の支援が奏功したと見られている。昨年8月の総選挙で政権政党の座を降りた自民党ではあるが、福岡の同党県議団は活力を失っていない。戦略・戦術を練り上げてきたのは、同党県議団会長・蔵内勇夫氏である。県議会の会派控え室で話を聞いた。
首長選挙で事実上の3連勝。この結果をどう見るかという問いに対し、蔵内県議はこう語る。「基本的に国政と地方政治は別。特に最近の選挙ではその傾向が顕著だ。首長選挙は国会議員の代理戦争ではない。筑後、久留米、糸島の首長選挙がそれを証明している。有権者は、誰がどういう街づくりをするのか冷静に判断している」さらに「地方選挙は全国規模の選挙のように報道されない。その分、予断が入らず、有権者が自分で考えることができる」として、地方選挙が中央での大きな流れに左右されない理由を分析してみせた。
昨年の筑後市長選は、蔵内県議が仕切った選挙とされるが、自民・公明が推し当選した候補者は民主党にも推薦願いを出している。政権交代後の政治状況を冷静に分析したうえで、国会議員の代理戦争でもないという構図を作り上げたのである。見事というほかない。この戦法は、今回の糸島市長選挙でも引き継がれている。当選した候補者はどの政党の推薦も受けず、政党色を薄めて実績やビジョンを提示する選挙戦を展開したのだ。一方で、自民党県議団や公明の組織はフル回転。勝利への原動力となった。言葉にも自信がみなぎる。
「筑後は古賀(誠)VS野田(国義)、糸島は太田(誠一)VS藤田(一枝)などと囃し立てられたが、実際の構図は全く違った。マスコミが描いた幻想に過ぎない。当選した候補者は推薦願いを出すなど民主党にも配慮している。首長は政党のために働くのではなく住民のために働くからだ。永田町の図式は、少なくとも福岡の地方選挙では通用しない。ただ、(自民党の)県議団には、それぞれの選挙で最大限の支援をお願いしてきた。ありがたいと思っている」。
(つづく)
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