昨年11月の筑後市長選、そして今月14日の糸島市長選では、政党の推薦を受けなかった候補者が当選を果たした。1月の久留米市長選挙も同様である。ただ、筑後、糸島の両市長選では、民主党が対立候補を擁立し推薦を出している。事実上、民主VS自・公という図式だったことは明らかだ。そして民主党系の候補者は惨敗に近い形で敗れ去った。民主党の地方組織の弱さを露呈したが、局地戦における戦略・戦術では、やはり自民に一日の長があるようだ。
政党色を薄め、国政と地方政治を切り離した戦いを演出したのは他ならぬ蔵内勇夫・自民党県議団会長だと言われる。蔵内県議は、「地方選挙においては、有権者の考え方がしっかりしていて、ムードに流されることはない」と言い切る。「有権者の判断を信頼している」とも言う。08年、民主党の福岡市議が本会議場で「有権者は専門知識が少ないほか、ムードや感情に左右され、合理的、長期的判断が難しい」と語ったのとは大きな違いである。
蔵内県議の自信を支えているのが、43人という最大勢力を誇る自民党県議団であることは間違いない。自民党が推す候補者が首長選挙で3連勝を飾った背景に、同県議団による選挙支援があったことは見逃せない。蔵内県議は「(民主党政権下では)地方議員がしっかり固まっていることが重要」として、県議団の結束を強調する。その上で、今夏の参院選への意気込みを語る。
「吉村(剛太郎)さんが国民新党から出馬すれば、保守票が掘り起こされて大家(敏志)県議(自民党公認に決定)の票は増える。郵政票は吉村さんに流れるわけで、本来、大久保(勉)参院議員に行くはずの票が減る。民主党が事実上の2人目を擁立すれば、ここでも大久保さんの票が減る。自民党は困らない。乱立するなかで弘友(和夫)参院議員(公明党)が福岡選挙区で立てば、面白い戦いになる。民主党の支持率が低落傾向にある以上、どうなるか分からない部分もあるが、とにかく地方議員に結束が求められている。いずれにせよ、福岡県と中央のパイプは必要。だからこそ、県議の中から参院選の候補を出す必要があった。支部ごとの(公認候補は大家県議との)判断に誤りはなかったということだ」。
民主党政権下の逆風をものともしない態度にはある種の余裕さえ感じさせる。「自民党県議団健在なり!」蔵内県議の心の叫びが聞こえてきそうな1時間だった。