<厳しい業界環境のなかで業績アップを続ける>
―前々期から決算期を3月から12月に変更で、数字上は増収ではありませんが、実質増収を続けていますね。
原田 おかげさまで、実質増収を続けさせてもらっています。これも、社員の頑張りと、お客さまに認めてもらっていることからだと思います。それと、決算期が3月だとちょうど物件が完成する時期と重なり、借入が多かったりと、財務的には一番悪いときだったんです。販売は完成の半年後ですから、売上が立たない物件を持っている状態ですからね。それで、金融機関さんにも相談して、12月にしたんです。借入もかなり圧縮できましたし、財務的にもかなり良くなっています。
―12月が決算ですが、前期の見通しはどうでしょうか。
原田 リーマン・ショック以降、業界環境は厳しいですが、おかげさまで販売のほうは順調でして、売上高は92~93億円になる見通しです。前期の利益面は、地価と建築費の高騰やファンドバブルの影響で、利益率は落ちています。それでも、経常利益で2億円は確保できる見通しです。この不況下で、よく頑張ったかなと思っています。借入金の圧縮も進み、プロジェクト資金においては今期末には、ほぼゼロの状態です。
―この厳しい状況で、利益を確保して、売上も伸ばしているんですね。
原田 厳しい状況は当社も例外ではありませんでしたが、ひとことで言えば、強力な営業力と「エンクレスト」のブランド力です。当社営業部の幹部社員は、ほぼ全員がプロパーであり、団結力があります。また社員全員が危機感を持ち、一丸となって頑張ってくれた結果です。それと、今は金利が安い、物件は安くて良い、家賃相場は変わらない、と投資家にとっても良いことずくめなんです。
―シックスの破綻では、同じ穴の狢(むじな)ではありませんが、同じような目で見られたのではないですか。
原田 もちろん、シックスの破綻で、我々も厳しい目で見られました。ですが、間違ったことは一切やっておりませんし、当然のことですが預かっている管理組合の資金を全くの別勘定でしっかりと管理しています。社内においても、コンプライアンス体制を整備していますし、そこをしっかりとアピールしています。それに、上場企業であるシノケンさんと資本・業務提携して連結対象になったわけですから、変なことをしていたらできませんでしたよ。
―そういえば、御社も株式公開を視野に入れて準備もしていましたね。
原田 そのことが今考えると良かったと思っています。今回の件でも、公開準備をしていたことにより、スピーディーに問題なく提携することができました。当時は、公開というより、健全な会社を目指すというか、いつ、誰に対しても恥ずかしくない企業にしようと思ってやってきたことが間違ってなかったと思っています。
―今後の市場と、業績の見通しはどうですか。
原田 今回の資本・業務提携による効果が現れるのは、2~3年はかかるでしょう。ですから、今計画段階にある物件や進めている物件などから、今期は100億円は行くと思います。
ただ、その後の1~2年は横這いになるでしょう。今年は500戸弱の予定で、その後も500~600戸で推移するというか、市場を見極めようと思っています。それから、次のステップに進みます。ただ、これだけではなくて、中古物件の買取による販売なども取り入れていきます。場所が良ければ、リニューアルすることで、新築より魅力あるものもありますから、そうした新しいビジネスの構築もやっていきます。
―シノケンも、100億円からの売上高が連結対象になるのは、嬉しいでしょうね。
原田 それは分かりませんが、「えんと組んで良かったな」と思ってもらえるように、頑張っていこうと思っています。
―最後になりますが、今回の提携の決め手になった部分を一言でお願いします。
原田 相乗効果とか、お互いにメリットとか、色々あるのも事実ですが、決め手になったのは「信頼」です。
実は、シノケンさんが苦境に陥った姉歯事件のときに、その当時も取引はしてたんですが、事件発覚後にシノケンさんから福岡で3棟物件を引き受けたんですね。それを、篠原社長は忘れずに恩として感じてくれていたことを、よそから聞きました。私の方も、そこまで恩を感じてくれて、なおかつ忘れないでいてくれる人は信頼できると思いました。
いろいろなことを言いましたけど、最後の決断の決め手は篠原社長との信頼関係です。それと、福岡から東京の市場に出た同業の上場企業ですから、福岡の業界のためにも成功していただきたいと思っています。そうした気持ちを含めての、資本・業務提携です。
―本日はありがとうございました。ますます、飛躍される予感がします。頑張ってください。
(了)
【文・構成:石崎 浩一郎】
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