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健康ビジネスのキー・パーソン(7)~エバーライフの元マーケティング本部長がホンネで語る(2)
特別取材
2010年3月 2日 08:00
(株)アイリンク・アソシエイツ 代表取締役 井野和弘氏

商品への思い入れだけではダメ

(株)アイリンク・アソシエイツ 代表取締役 井野和弘氏 そうすると、健康食品に1万円くらい使う人はけっこういるし、化粧品は消耗品なので、これもあります。じつはこの二つくらいしかないのです。そのなかで、どんな商品をどういう人たちに、どういう媒体で売るのかと考えてみれば事業というものが見えてきます。でも、何から手をつけたらいいのかは全く見えないのです。なぜかというと、商品と媒体、受注の仕方とか、その人へのクロスセルのしかたとか、あるいは電話するのか、メールでつながるのかなど、いろいろなことがすべてつながっているのです。ですから、どこか一つだけの発想ではうまくいかないのです。たまたまいくことはあるかもしれないですがね。「この商品はすごくいいのです」「惚れているのです」というのはいいと思うのですが、その商品への思い入れだけでは決してうまくいかない。それが通販の難しさです。
 私が入り口の商品だと思っているのは、お客さんが「これ」と思ってくれる商品――ファーストコンタクト商品といっているのですが、これが何なのかによってぜんぶその後が変わってきます。
 これは本来売りたいものでなくてもかまいません。本来売りたいのはセカンドコンタクト商品であり、わかりやすくいうと、ステップマーケティング、最初にサンプルを買ってもらって、本品を買ってもらうというツーステップ。最初に本品を買ってもらいたいわけではなく、サンプルを入り口にしてその次に買ってもらいたい。こういうことは今までもよくあることです。
 そこで本当に買ってもらいたい商品がリピートするのかどうか、何回リピートするのかというのは次のビジネスにとってすごく大きなことです。
 最初の一個を買ってもらうのに必要な宣伝コストがあります。業界用語でCPO(コストパー オーダー)とかCPR(コスト パー レスポンス)と表現しますが、媒体とか制作費とかがそれに当たりますね。ここで利益がとれることはほぼないのです。ここで利益がとれるのではないかと認識を誤ると、かなり危ないですね。相当にうまくいくばあいなどが雑貨ではあります。化粧品でもままありますが、健康食品ではほとんどないでしょう。ですから、すでにこの入り口でいきなり損失が出ているわけです。この損失をどこで埋めるかという後のマーケティングの戦略がないと成功はおぼつかない。
 ところが最初のところで儲かるのではないかと妄想を描いているのが、中央の大手のメーカーなどで往々にしてあります。本業で数千億円売り上げている会社ですが、いざ通販となるとやっていることはまるで子供なのです。お金の無駄遣い、人の無駄遣い、この人たちは、たとえば福岡の通販会社みたいに背水の陣を敷いていないわけです。
 中央の大きな会社はいきなりプロジェクトチームを組むのですね。そして開発から誰、広告宣伝から誰、システムから誰――というふうに10人ぐらい出してきて、そこに予算をつけましょうというので、数億円の予算をつけます。
 そこで商品は何がいいかなということでそこから考えるわけです。手さぐりでやっていくのですが、結局1年で数億円を使って、売上が数千万円というケースが多いですね。結果、だめだったねというのでプロジェクトは解散し、メンバーは元の鞘に収まり、誰も責任は取らない。そのようなスタンスで何かやれるかというと、やれないですよね。
 しばしば東京で、「メーカー通販はなぜうまくいかないのでしょう」と聞かれたことがありますが、このような見るも悲しいありさまを公にするわけにもいきません。

(つづく)

【文・構成:田代 宏】


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