2月は客商売において1年で最も冷え込むと言われる時期である。年末年始商戦の後であり、外を歩くのも寒いとあっては、客足はどうしても鈍るのである。特に今年の同月は、数年来続く不況のなかで迎えた閑散期だ。中洲ではどのような変化が起きたのだろうか。
「仕事がめっきり減りましたね。今まで毎日髪をセットに来ていた女の子たちが、ひとり、またひとりと日を追うごとに減っていますよ」。
そう話すのは、中洲で美容室を営む女性経営者。彼女の店の顧客は、中洲で働くキャバクラ嬢が中心だ。3年ほど前までは、小生も"仕事で"彼女の店へ訪れることが度々あった。その頃は、昼15時を過ぎると、出勤前に髪型のセットを頼むキャバクラ嬢が大勢押し寄せ、戦場さながらのあわただしさになっていたのだが・・・。
彼女の話によると、08年秋の大不況から客の減少は続いていたものの、今年2月の状況はそれまでに比べ際立っていたという。そのなかでも著しく減ったのが派遣コンパニオンである。
今、中洲における派遣コンパニオン業界は、徹底した実力主義の世界になっている。派遣会社も派遣先のニーズに合った人材を派遣しないと仕事が減る。そのニーズとは、"接客サービスの質"であることは言うまでもない。さらに最近に至っては、"リピーターがとれる"レベルでなければ、安定して仕事にありつけないという状態になりつつあるという話も聞く。
そのようななかで、勝ち組と言える派遣コンパニオンの子に会った。昼間はアパレル関係の仕事をしているという彼女は、週2、3回ほど中洲の派遣会社事務所へ出勤する。そして、必ずと言っていいほど派遣されるという。「お店からご指名を受けることもあります」と言うだけあって、中洲の不況もどこ吹く風といった感じだ。
それだけ優秀な人材であれば、店の方も放っておかない。「正規の従業員として働いてくれないか」と誘いを受けることもあるという。それでも「さすがに専業でやろうとは考えていません。今は副業なので、気持ちに余裕を持って接客ができていますし」という。
一方で、あるクラブの経営者は語る。
「正規雇用で働いてもらうのが理想ですが、(客の入りが)不安定な状況ですから。忙しい時だけ(派遣の子に)来てもらうようにしています」。
派遣コンパニオンに対する中洲全体の需要は減っている。だが、キャバクラの人員削減が進む限り、需要そのものは無くならないだろう。そして今後は、副業として中洲で働く女性がますます増えていくかもしれない。
長丘 萬月(ながおか まんげつ)
1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。
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