長崎県佐世保市長 朝長 則男 氏
2月12日、HISの経営支援によるハウステンボス再生への道筋が決まった。この一報に胸を撫で下ろした関係者も多いだろう。とくに、この大型施設を有する佐世保市の市長である朝長則男氏にとって、ひとつの大きな障害を乗り越えたことは間違いない。そんな朝長市長に、今の率直な気持ちとハウステンボスの今後について考えをうかがった。
4つの「しい」が必要
―ハウステンボス再生と佐世保経済の活性化とは、どのようにリンクさせていきたいですか。
朝長 佐世保は観光立市といっていますが、ハウステンボスと九十九島の二本柱で観光を考えています。九十九島だけでは全国や東アジアにアピールするには弱すぎる。ハウステンボスと一体であれば、人工美と自然美とを組み合わせたかたちで東アジアにも売りやすくなる。国内的にも、両方が絡み合ったほうが観光商品としてつくりやすく、アピールもしやすいと考えています。
また、佐世保は距離的に中国に一番近いところです。私は、福岡が東アジアのゲートウェイだとは思っていますが、佐世保はいわゆるサブゲートウェイだという考え方はできるのではないかと思っています。将来は韓国や中国との国際航路やクルーズ船誘致を考えておりますから、そのためにポートルネッサンス近くの国際ターミナルの工事も始めております。
こうした戦略から見ても、佐世保市として中国、韓国を含めた対東アジア戦略には、ハウステンボスは欠かすことができません。経済にとっても政策にとっても、非常に重要なポイントではないかと思います。
―市長が考える、ハウステンボスの強みと弱みとは。
朝長 ひとつには、コンセプトが万人受けするかどうかという問題があります。特定の人だけに受けるような施設ではやがて限界がくるでしょう。 私は観光に関して、よく4つの「しい」が必要だと言っています。それは「美しい」「素晴らしい」「楽しい」「おいしい」です。ハウステンボスについては、建物や施設は「美しい」「素晴らしい」を満たしていると思いますが、「楽しい」「おいしい」については欠けているのでないかと思います。 私は、テーマパークにしろ観光地にしろ、この「しい」を大切にしていかなければ観光客には支持されないと思います。いかにして「美しさ」「素晴らしさ」を表現していくか、大人でも子どもでも感じられる「楽しさ」をどのように演出するのか、そして「おいしさ」をどのようなかたちで満足させるのか。中国、韓国をターゲットにするならば、そうしたことも考えなければならない。とくに、食に関することをより重視していかなければならないと思います。また、「楽しさ」のなかでは、ショッピングも大きな要素だと考えられます。
福岡財界に期待すること
―「西九州統合型リゾート構想」で地方再生型カジノ導入のため、「カジノ特区」を申請されました。現在は止まっていますが、今後はどのようにされるのですか。
朝長 これについては、法律を変えなければできない、あるいは現行法のなかでどうやるのかということです。昨年6月に特区申請をしました。今までとは違い、きちんと法案までつくって出しました。しかも外国人専用ということでのカジノです。今の刑法を変えるのでなく、現行法でやれる、競馬や競輪や競艇と同じような特別法の位置づけのなかでやる方法を考えてほしいということで申請させていただきました。
ただ、今回は政権交代の時期でもあり、自民党時代に申請したものが政権交代のなかでほとんど検討されないまま、前回と同じような理由で断られました。新政権になっていろいろな方とお話しするなかで、民主党としても観光立国ということを考えれば、当然、世界120数カ国でしていることを日本がやらないのはおかしいのではないかということです。
ハウステンボスの新運営会社がカジノをしたいということであれば、今までと同じようなかたちで長崎市、諫早市、大村市、西海市、佐賀県の嬉野市、武雄市、そして今度は長崎県を含めたところで改めて特区申請したいと思います。
―今後、福岡財界に期待することをお話しください。
朝長 今回、財界の方々とお会いするなかで、福岡財界のパワーというか力強さを感じることができました。佐世保は福岡経済圏ですから、そういう意味では福岡のパワーを活用し、一体となってやっていくことが必要ではないかと思います。
福岡財界のみなさんには、佐世保にももっと目を向けていただくようにぜひお願いしたい。とくに、今回はハウステンボスへの出資もしていただけるということですので、おのずと厳しい見方もされるでしょうし、友好的な支援をしていこうという思いを持っていただけるのではないかと思います。たいへん期待しています。
【文・構成:大根田 康介】
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