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企業、人 再生シリーズ

黒木透・再生への道(29)
企業、人 再生シリーズ
2010年3月 8日 11:25

<予想を超える快進撃>

 平成7年の平尾支店開設によって、黒木が取り組みたかったことがすべて揃うことになった。コンサルタント、建築、不動産、管理。そしてオーナーズクラブと協力会の発足。まさにゆりかごから墓場まで。入り口から出口までをすべて押さえることができたのである。

 平成7年以降、黒木の会社は右肩上りの発展をとげる。
「倍々ゲームでした。今年の決算が5億なら、次は10億、その次は20億。とんとん拍子に事業は拡大していきました」
 その成長は予定の範囲内なのかと尋ねると、黒木はそれ以上だったと振り返る。売上とともに経常利益も伸長していった。売上に対して5%という利幅を維持したまま、数年が経過した。

 この成長は黒木の力だけでは当然ない。黒木が育成した人材が、年を追うごとに成長していったことも大きな要因である。
 「あるとき、社員が受注した物件に挨拶に行きました。そしたら社員が私に言うのですよ。『社長は建築途中に現場にきてくれるな』と。わが社のお客様に挨拶をして何が悪い、と思いましたが、理由を聞いて納得しました。私が訪問すると利益が下がってしまうらしいのです。私は自分でも気がついていなかったのですが、物件を訪問すると、どうやらしなくてもよいサービスをしてしまっていたようなのです。たとえばポストはサービスさせていただきます、や、駐車場はグレードアップしておきましょう、などです。純粋にお客様のためを思っての行為だったのですが、それが必要のないことだと指摘されてしまったのです。オーナーも情で仕事を依頼してくれているのではありませんし、私たちもお金をいただくために仕事をさせていただいております。以後、私は現場には竣工前には行かないことにいたしました」

 ここで重要なことは社員の視点である。オーナーの満足だけを高めるのではなく、自社の利益率まで計算をして提案できるまでになっていたのだ。さらに社長である黒木に直訴できるほど良好な関係が築けている点も見逃すことができない。経営的な視点まで身につけることができているのだ。

 この一例に限らず、黒木の会社はまさに盛りを迎えていた。黒木の脳裏にひとつの言葉が浮かぶ。

 「福岡でNO.1になろう」

(つづく)

【柳 茂嘉】


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