前回の記事で中洲の派遣コンパニオンが減っているという話を書いた。接客サービスが良く、客がとれる女の子だけが残っているのが現状だ。そうした傾向は、客だけではなく、派遣を依頼する店にとっても望ましいことらしい。
某スナックのママは、「質よりも量」だった頃の派遣コンパニオンについて語る。
「忙しくて人手が足りないから、(派遣コンパニオンを)呼んでいるんですよ。"猫の手"も借りたい、そんな時です。だけど、お客さんとも話さない、テーブルの片付けもしてくれない、ただ座っているだけ。そんな子が来て困ることがよくありました。せめて容姿が良ければ、まねき猫ぐらいにはなってくれるのだろうけど」。
景気が良く、毎晩人手が足りなかった頃は、どの店もとにかく頭数合せに必死。それこそ、接客サービス業のイロハも分からない若い娘が、"ただ座っているだけ"で給料がもらえていた。そのことを考えれば、中洲全体の景気は「今が正常で昔が異常だった」という某高級クラブのママの言葉に説得力を感じる。
しかしながら、店レベルではそれぞれにとっての異常事態が発生している。
3月にして福岡市の日中の最高気温が4度、雪が降り、強風が吹き荒れた日のことである。"雨天決行、大雨強行"の中洲マニアでさえも、こたつで丸くなっていたのだろうか。「店関係者しか歩いていないのでは?」と思うほど、中洲大通を歩く人はまばらだった。
「本当に店がたいへんなことになっています。お近くにいるなら来てください」。
およそ営業とは思えないメールがキャバクラ嬢から届いた。「さては、何か事件が起きたのだろうか」と、半ば野次馬根性で駆けつけた。たしかに事件が起きていた。午後10時台にして、店に客が全くいないのだ。
以前、その店へ訪れたのは2カ月前の1月頃だった。客待ちが出るほどの大盛況で、それこそ派遣コンパニオンを呼んでいたぐらいだった。その時とのギャップがありすぎて、「まさか、貸し切り料金が請求されるのでは?」と不安を感じたぐらいだ。
忍びないので1セット(60分)だけ入ることにしたが、その間も小生以外の客は来なかった。客も少ないが、キャバクラ嬢も少なく感じたので店員に聞くと「4人の子が一斉にやめた」という。それを聞くと、客の少なさは寒さの影響だけではない気がするのだが・・・。
小生の両隣に座った女の子は、「昼間の仕事があって、中洲は週に2、3回ほど出てきます」というOL兼業型と、ひと月前に入店したハタチぐらいの新人(兼業ナシ)である。
会話のなかで兼業型の子が、新人へ「今はホント、これ(キャバクラ嬢)1本で食っていくのは厳しいよ。考えた方がいいって」と話していた。客がいなくてガランとしている店内に、その話声がよく通るのである。外も寒いが店のなかもかなり寒い。不景気が続けば、派遣のみならずキャバクラ嬢を本業とする女の子もどんどん減っていくのかもしれない。
長丘 萬月(ながおか まんげつ)
1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。
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