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コダマの核心

2010年は激変してこそ残る(30)~どちらが優先か『成長か、陶汰か』論争(前)
コダマの核心
2010年3月18日 08:42

<再生コンサルの嘆き>

 このシリーズで登場したことのある再生コンサルのAさんと、企業を幾多も経営してきたBさんと3人で経営談義をしたことがある。この時の会話に出た問題点を整理してみた。
 Aさんは福岡における経営再生の一番古い老舗だ。一昨年の年末、資金繰りに行き詰る寸前の友人の会社を紹介した。すると、1年もしないうちに完全に再生の目鼻をつけてくれた。「見事、天晴れ」と表現するしかない。相談のある経営者がいれば秘密裏に道筋をつける。
 A氏の辣(らつ)腕ぶりは多方面に発揮された。そのなかでも秀逸なのは、北九州の企業における再建であった。しかし、その一方で債権をカットされた側の嫌みの声がA氏本人の耳に入る。一時的に関係者に迷惑をかけることにはなるだろうが、企業が再起して恩返しができるようになれば「Aさん!! ありがとう」と彼らも感謝することになるはずだ。だが現実は、一時的に債務カットをしてそのまま潰れるケースも生じる。A氏はジレンマに陥った。「潰れる寸前の経営者を一時的に助けても再度、関係者に迷惑をかけては恨まれるばかりだ」と自問自答を繰り返したという。
 長期にわたる苦悶の思索の果てに得た結論は下記の通りだ。
「潰れる、または破綻寸前にまで落ちる経営者はもともと能がない。仮に財務的に余裕を得られたとしても、またいずれは危機に襲われる。彼らには、厳しい激変時代に生きられる経営の成長戦略を構築できるわけがない。再生コンサルを自認する以上、1度手がけたクライアントを潰すようになれば我が大きな恥であり、禍根を残す。そういう悲劇をストップするために飯を食う種を与えなければならない」。
 そこまでに“コンサル業の使命感”を追い込むのも相当な覚悟がいる。変わり者といえば変わり者。新聞・マスコミの偉そうぶった論客たちが、天下国家を論じても許される長閑な時代ではない。彼らは「我が会社の経営にはまったく無能であった」ことが露呈されれば、信用失墜を招くことにお気づきでない。新聞記者たちが論評だけで許される時代は終わったのだ。その点では、長年、企業再生コンサルに携わってきたA氏は「して見せなければ話にならない」という単純明快な真理を楽しく具現化しようとしている。

<淘汰は自然社会の摂理>

 「ちょっとまった!! Aさんの論はおかしいよ。自然社会では淘汰されるのが、摂理だ。摂理に逆らっては必ず罰を被る。徹底的に陶汰された大地に新しい息吹を育てるのが常道だ」と割り込んできたのが、Bさんだ。同氏はコンサル畑のAさんとは対照的だ。自ら技術ベンチャー企業の経営者として上場一歩手前まで漕ぎつけた人物である。それは平成の初頭の頃だった。彼は時代の変化を読んだ。「拡張の時期が終わった」と判断して上場を断念したのである。
 「いまから思うと上場することを止めたのは正解だった。予想通りに平成初頭から公的予算が急減して業界は四苦八苦している。当時、上場した企業ですら現在の経営内容は悲惨なほど厳しい。予算が半減したのだから業者も半減するというところまでには至っていない。だからしんどい。淘汰の摂理が生きてこないと業界は全滅する。私も全国に営業所を出し、拡大路線の修正をしていなかったならば倒産したオヤジになっていた」。

(つづく)

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