~因縁浅からぬ間柄の両社~
<互いに配慮する両社 今後の正面衝突はあるか>
因縁浅からぬ間柄だけに、熾烈な戦いが繰り広げられると周囲からは見られていた両社であるが、対立の構図は皆無だ。両社とも「共存共栄」(明治屋産業)、「規模の差が大きすぎる」(海星ムサシ)と格別の配慮を見せる。
谷尾凱夫氏と明治屋産業の経営陣は、おじ・姪・甥の関係だけに「溝は深い」と関係者は指摘する。一方で、住吉氏と明治屋産業経営陣の間に、感情的な問題は見えてこない。住吉氏と谷尾凱夫氏が近いのは明らかだが、住吉氏は独立後も露骨な営業活動は行なわず、沈黙を守った。現実に住吉氏が退社する際に、明治屋産業幹部から慰留があったことが指摘されている。実は、住吉氏が退社したのは谷尾凱夫氏が退社する1年ほど前のことで、「自ら身を引いた」とする見方が強い。また、住吉氏の人柄について、「情に厚い。亡くなった会長への忠誠心を鑑みても、弓を引くことはありえない」と関係者は指摘する。
現在でも、互いに配慮する姿勢は両社の社員にも受け継がれている。
ただし、両社を担う世代が変わってきている。明治屋産業は、現体制での経営は相応に成果を収めている。しかし、次の世代の事業継承に際して、皮肉にも兄弟による経営という手法が引き継がれた。能力の高い中堅社員の処遇を含めて、どのような体制を敷いていくかが注目される。
一方の海星ムサシは組織の同族化に否定的だが、内藤社長の本心は見えてこない。住吉氏同様に義に厚いとされるだけに、住吉氏子息の能力如何では大政奉還もあり得る。その際に社員がいかなる反応を示すか、こちらも今後注目される。
新陳代謝が進んでいく過程で、それぞれの生え抜きが増えている。パイが少なくなってきているなかで従来の延長線の営業展開を続ければ、下降線を辿る可能性が高い。両社がこれまで通り紳士協定を続けたとしても、実力者同士だけにぶつかる案件が増加することが予想される。
透明性や収益性など、双方ともに優位性と課題はある。取り組みによっては急速な差が開き、形勢逆転することもありうる。
【鹿島 譲二】
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