2月の閑散期は、中洲の飲食店経営者における不況への恐怖感を一層あおったようだ。3月に入り、値下げイベントを実施するキャバクラやスナックが目立つようになってきた。そのほとんどは、集客数が見込めない平日夜への対策である。
窮地の一策であるからして、店の運命を左右しかねない。しかしながら、そうした策のなかにおいても、逆に客離れを起こしかねないと思われる内容もある。
「月曜夜は1万円で時間無制限の飲み放題です」
現在、通常料金60分6,000円の店で実施されている企画。聞こえはいいが、"1万円ポッキリ"としていないところに注意。実は、利用条件として別途でボトルキープをしなければならないのだ。さらに、キャバクラ嬢の指名料や、そのドリンク代も別料金。総額で通常料金で飲むよりも高くつく場合もある。
考え方にもいろいろあり、「他店よりもサービスの質を上げて集客数を上げよう」ではなく、集客をあきらめ「数少ない客からむしれるだけむしり取ろう」と考える経営者も多い。もしかすると後者は、閉店を見込んでの戦略かもしれないが・・・。
前にも書いたが、中洲で閉店が多いのは年末である。閉店を決めた場合でも、ほかの月よりも集客数が見込める12月までは店を続けるパターンが多いのだ。ユーザー側にとっては、たまったものではない。
世のお父さんたちのポケットマネーは減っている。中洲へ飲みに行きたくても行けないのが実情だ。そのようななかで、3,000円前後の予算で飲めるスナックでは、リーズナブルな値段で長く楽しめるイベントが増えてきている。
「60分3,000円で飲み・歌い放題。さらに○曜日はキープ代半額」
また、カラオケを利用したゲームで「高得点が出れば料金半額」といった企画を実施する店もある。「お客様の予算に合わせて料金を下げないとねえ。高いところ(高級クラブ)がどんどんつぶれていますから」と、元高級クラブ嬢のママさんは話す。集客数が上がっても客単価が下がる以上、以前のような利益は上がらない。しかし、「常連さんが店から離れていくほうがもっとつらい」と彼女は言う。
彼女の店は、平日の夜でも他店に比べると賑わっているほうだ。その店で隣に座った常連客と会話をした。彼は店に来たのは3カ月ぶりだと言う。「中洲へはどれくらい飲みに来よると?」という質問をされた。小生は、少し控えめに「週1回ぐらいですよ」と答えた。すると、ママさん以下、複数の常連さんが「あんた、そりゃ来すぎばい。ずいぶん景気のよかねえ」と口をそろえて言うわけである。
中洲の景気が、昔とはずい分変わったことをあらためて感じた瞬間だった。
長丘 萬月(ながおか まんげつ)
1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。
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