福岡ソフトバンクホークス(株) スカウト部長 小川 一夫 氏
福岡のみならず九州の野球ファンの期待を一身に背負う福岡ソフトバンクホークス。一昨年はリーグ最下位という苦杯をなめ、奮起が期待された昨年もプレーオフ1回戦で楽天イーグルスに破れた。色あせた常勝若鷹軍団の輝きをいかにして取り戻すか。組織体制の再構築に乗り出した同球団にあって、これまで城島や川嵜、本多といった名選手を次々と見出してきた小川一夫・スカウト部長に話を聞いた。
<競い合う選手たち>
―開幕も間近です。今年は選手層が充実しているようですね。
小川 滑り出しはまずまずです。昨年も一昨年も途中までは優勝争いに絡んでいましたし、交流戦でも素晴らしい戦績(総合1位)を残しているだけに人材は豊富です。ですが、シーズン途中の故障者の続出が選手層を薄くしてしまったところがあります。今年は彼らが故障から復帰したうえ、調子を上げてきていますので楽しみですね。
―和田選手なども復帰して、チーム内の競争は激しいのでしょうか。
小川 6月にひじを故障した和田は、問題ない状態にまで戻しています。去年のこともありますし、今年にかける覚悟は相当なものです。杉内の状態も良いですね。同じくひじを痛めていた大隣やケガで本調子を出せなかった神内、足の故障から復帰した小椋もいますし、左は先発・リリーフともに充実しています。若い巽(たつみ)に大場、岩崎(※1)もレベルが上がっていますし、久米や藤岡も交えて競争は相当激しいですよ。
―野手はどうですか。
小川 松田とイ・ボムフォ、それにオーティズの3人が入っているサード争いは熾烈ですね。ショートは川崎(※2)、福田、今年から今宮も入ってきました。セカンドは本多と明石です。実績や経験では本多が間違いなく上ですが、仮に故障で休んだりすると取って代わられる可能性もあります。
外野はもっと厳しいですよ。腰を痛めて不本意な一年だった柴原はうかうかしていられません。本人が一番自覚しているでしょうし、城所が成長著しいだけに、彼らには期待しています。主軸の松中はと言えば、自身はバッティングだけでなく守備にもつきたいと望んでいるようです。ですが、チームとしては膝の状態を考えざるを得ません。若い選手に出場の機会を与えて経験を積ませる意味もありますし、打撃に専念して欲しいところです。
昨年大きく成長した田上は頼もしい存在になってきました。キャッチャーは近代野球の要としてディフェンス中心のポジションですが、やはり打てないというのは寂しいものです。謙虚でありながらもおとなしくはなく、真摯に野球に取り組んできた成果が昨年26本塁打につながりましたし、正捕手としての自覚が出てきています。そこに高い守備能力を持つ高谷や山崎が絡み合うことで、競争が生まれています。
ただ、競い合うなかで不調に悩む選手もいますが、それ自体はたいした問題ではありません。勝負は夏以降なのです。無理をさせず、故障をさせず、選手層の厚さを維持できれば、選手にもチームにも良い結果がついてくるはずです。
※1:崎は山かんむりに立・可
※2:崎は山へんに立・可
【文・構成:田口 芳州】
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら