22日、防衛大学校(神奈川県横須賀市)の卒業式が行なわれた。今年度の卒業生は364名(留学生11名を除く)。うち卒業後に自衛官にならない任官辞退者は17名であり、前年の半数であることが分かった。
ある元幹部自衛官(防大OB)は、自分が在学していた時代を次のように振り返る。「私が1学年次の卒業生においては、任官辞退者が珍しくなかった。成績トップクラスの学生でさえ自衛隊へ行かず、民間企業へ就職するほどだった」。彼が在学していたのは、1996年から2000年の4年間。97年に新卒の就職状況が一度回復したが、大手金融機関の破綻等を受けて、97年下旬から98年にかけて景気が急速に悪化。再び就職氷河期に突入した時期である。
就職氷河期への再突入は、卒業生の進路のみならず新入生の入学者数にも大きな変化をもたらしたという。
「97年度以降は、任官辞退者の数がみるみる減っていった。また、新入生の数も大幅に増えた。防大は民間大学よりも試験および合格発表が早い。その上、受験料も無料なので、私が入学した頃は、模擬試験のつもりで受験する学生や、後に合格した他大学へ進学する学生が多かったのだ。当然、合格者数よりも新入生の数は少なくなる。そこで防大側は実際の定員よりも多めに合格者を出していた。すると、98年ぐらいから新入生の数が大幅に増えた。民間企業の雇用が悪化するなか、卒業後の就職(自衛隊への任官)までを考えて受験する学生の割合が増えたためである」。
現在、自衛隊の教育機関へ進学する学生はどのような考えを持っているのか。今年から陸上自衛隊の少年工科学校に入学する熊本県の中学卒業生に、その志望理由を聞いた。
「高校や大学を出ても仕事が見つからないかもしれない。両親や家族に心配や負担をかけたくないのです」。若干15歳の本音には、家族への思いやりがうかがえた。
少子化に伴い、自衛隊への入隊者数が年々減少している。しかしながら、前出の元幹部自衛官は、かえって隊員の質は上がると見ている。「現在の社会情勢のなかで入隊する隊員には、公共精神の根幹である家をおもう気持ちが強いはず。自衛隊における教育を通じて、国防精神へとつながるだろう」と。
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