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ビタミンのはなし(9)~ビオチンと掌蹠膿疱(しょうせきのうほう)症や糖尿病
特別取材
2010年3月29日 08:00
伊藤 仁

 ビオチンはビタミンB群のひとつであり、別名でビタミンHとも呼ばれる。ネズミの栄養障害で起こる皮膚炎として、多量の生の卵白を与えると起こるものがあり、「卵白障害」と呼ばれている。眼の周囲の皮膚が脱毛し、姿勢の異常やけいれん性歩行も招く。1927年にドイツのボアスが動物の肝臓中にこの予防因子を見つけ、1931年にドイツのジエルジーがこの因子をビタミンHと命名し、1936年にオランダのケーグルによって卵黄から単離され、その化学合成は、1943年~1945年にかけてアメリカのメルク社によってなされた。
 ビオチンは長い間、ヒトでは乳児の脂漏性皮膚炎が欠乏症として知られていた。これまで難病の1つとして、あるいは尋常性乾癬として診断されてきた掌蹠膿庖性骨関節炎がビオチンの欠乏によって引き起こされることが、前橋賢(秋田県本荘第一病院免疫内科)によって明らかにされた。この疾患は手掌や足底を中心に膿疱様の発疹が出現し、その症状がひどくなると胸、背中、腰に激痛や腫脹を伴い、あらゆる関節が痛んできて寝返りも出来ない状態になる。
 前橋医師は長年の研究の結果、この難病の原因はビオチンの代謝障害による免疫異常により引き起されることを明らかにした。ビオチンを1日、9mg~12mg投与することにより、治療日数の経過と共に、胸痛や間節の痛みが軽くなり、引き続き手や足に出ていた膿のような皮膚症状も徐々に良くなってゆき、最終的に治癒することに成功した。原因として腸内の細菌叢が極端に変化し悪玉菌が優位になることで、腸内でビオチンの産生ができなくなり、長期のビオチン欠乏状態がこの病気を引き起こすという。前橋医師は、また、アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬、そしてⅡ型糖尿病の発症にもビオチン欠乏が引き金になっている可能性があると指摘している。
 わが国では、ビオチンは保健機能食品への使用は認められているが、未だに食品添加物として認可されていないために市販の食品には使用できない。その結果、乳幼児が利用する粉ミルクにはビオチンがほとんど含まれていない。ビオチンはビタミン13種類のひとつであり、もっと広く食品に使用できるようにすべきである。わが国の栄養行政の大きな欠陥である。

(つづく)

<プロフィール>
伊藤 仁(いとう ひとし)100308_ito.jpg
 1966年に早稲田大学を卒業後、ビタミンのパイオニアで世界最大のビタミンメーカーRoche(ロシュ)社(本社:スイス)日本法人、日本ロシュ(株)に就職。「ビタミン広報センター」の創設・運営に関わる。01年から06年まで(財)日本健康・栄養食品協会に在籍。その間、健康食品部でJHFAマークの規格基準の設定業務に携わる。栄養食品部長を最後に退任。



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