2008年11月、米国バラク・オバマ大統領は、2008年のオイルショックとリーマンショックを乗り越えるため、再生可能エネルギー開発に年間150億ドル(約1兆4,000億円)を10年間投資して、500万人の雇用を生み出すと共に、貿易収支の赤字を解消するため輸入石油を減らす「グリーン・ニューディール政策」を打ち出した。
枯渇性燃料の供給事情は、我が国でも同じである。2008年のオイルショック時、原油価格は1バレルあたり200ドル近くまで高騰した。ちなみに現在は80ドルである。我が国の原油輸入量は15億バレルだから、バレルあたり10ドル値上げすると、約1.5兆円を産油国に過払いすることになる。平成19年度のわが国の貿易収支は約11兆円であるから、下手をすると我が国は石油で貿易赤字になるところであった。オイルマネーに抗するには、石油輸入量を減らすことである。
米国が、原油輸入量37億バレルに対し14兆円投資するなら、我が国は15億バレル輸入しているのだから、10年間で約6兆円の投資を行い、新たに200万人以上の雇用を生み出し、化石燃料への依存を減し、世界をリードする技術大国になる礎とすべきである。
CO2削減のためのエネルギー技術には、太陽光発電、風力発電、バイオ発電、燃料電池,蓄電池、ハイブリッド車、電気自動車、LED照明、直流給電、スマートグリッド(次世代電力網)等々があり、雇用は、エネルギー関連企業はもとより、電機、自動車、住宅、建設、ITなど幅広い業種に及ぶ。
LED照明(発光ダイオード)は、白熱電球の20倍以上の寿命、白熱電球の17%の消費電力で済む。その価格は、2008年1万円以上であったのが、2009年4,000円程に下がっている。価格がもっと下がれば、家庭、事業所は挙(こぞ)ってLED照明を取付け、CO2排出量を大幅に減らすことが出来る。先日、東芝ライテックが白熱電球の製造を中止したが、政府が資金を投入し、店頭にLEDしか売ってない時が来れば、業務部門と家庭部門のCO2排出量は半減する。
次の海外のヒントは、ドイツである。
ドイツは固定価格買取制(FIT)を導入した。その結果、CO2排出量は2007年値9.56億トンで、1990年の基準年値12.15億トンに対し、量で2.59億トン、率で21.3%減少させ、世界最大のCO2排出削減国となっている。併せて、ドイツは太陽光発電、風力発電の売上生産量世界一のトップ企業を誕生させ、雇用と外貨を確保している。
固定価格制は、再生可能エネルギーの買い取り価格を法律で決めるもので、EU27国中の20カ国、カリフォルニア州等が既に採用し、世界の趨(すう)勢となっている。一方、我が国は、税額控除や設備費用の助成等を行う固定枠制(RPS)を採用している。
(つづく)
【藤井 利治(ふじい としはる)氏 略歴】
昭和19年9月生まれ。九州大学工学部卒業。
福岡市入所後、福岡地区水道企業団理事、下水道局長、土木局長、水道事業管理者、福岡アジア都市研究所副理事長等を務める。01年に渇水と節水をテーマにした論文で、福岡市職員では初となる工学博士号を取得。著書に『水を嵩(かさ)む』(文芸社刊)がある。
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