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未来トレンド分析シリーズ

東南アジアにおける原子力発電の可能性(5)
未来トレンド分析シリーズ
2010年3月 3日 08:00
国際未来科学研究所代表 浜田和幸

 そんな慎重な声もまだ強く残るとはいうものの、インドネシア政府は2003年からロシアとの間で10年間の原子力協力協定を結んだ。第一段階では実験炉の設計と建設。第二段階では原子力発電所の建設と運営が検討されている。第二段階以降の原発ビジネスをめぐってGEや三菱、東芝、あるいはフランスのアレバといった大手原発メーカーがインドネシア市場への食い込みをめぐり激しい商談合戦を展開。当初、日本のコンサル会社が先行していたが、韓国の原発メーカーが急追を重ね遂には仮契約を勝ち取った模様である。しかし、韓国企業との契約には不明朗な点が指摘されており、果たして最終的に正式な契約が結ばれるかどうかは明確にはなっていない。

 最後はフィリピンである。フィリピンと原子力発電はこれまで相性があまり良くなかった。マニラの郊外に建設が予定されていたバターン発電所計画。1970年代の初め、マルコス政権のもとでエネルギー危機への切り札として計画がスタートした。ウェスティングハウスの軽水炉が導入されたが、計画段階から賄賂と汚職の象徴的なプロジェクトとなったものである。ずさんなコスト管理や設計建設が災いし、完成した時点で国際的な原子力安全委員が査察をしたところ、地震に対する備えが全くできていないということで安全操業のお墨付きが貰えなかった。

 その後、キナツボ火山の噴火という大事件が起こったが、もし原発の操業が始まっていたとすれば世界的な大惨事になっていた恐れもある。そうした経緯もあり、アキノ大統領はこのバターン原子力発電所を封印するという決定を下した。と同時に設計建設にあたったウェスティングハウスに対して、マルコス政権への賄賂提供の罪を問い、返金を求める裁判を起こしたのである。それ以来30年以上の歳月が流れたが依然として裁判の決着はない。その間、フィリピンの納税者は1日平均、15万ドルもの設計費の利息の支払いを余儀なくされているのである。現在、この負の象徴とも思われるバターン原子力発電所をどのような形で復活させるのか、その知恵が問われている。

 日本とすれば、フィリピンのみならず、こうしたアジア諸国の原子力発電の需要の高まりを受け、どのような具体的なビジネス展開に結びつけることができるのか、真剣に検討を深める時であろう。国際機関を巻き込んだ官民一体となったアプローチが期待される。

(了)

【浜田 和幸(はまだ かずゆき)略歴】
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 国際未来科学研究所代表。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。

 ベストセラー『ヘッジファンド』(文春新書)、『快人エジソン』(日本経済新聞社)、『たかられる大国・日本』(祥伝社)をはじめ著書多数。最新刊は『ノーベル平和賞の虚構』(宝島社)。近刊には『オバマの仮面を剥ぐ』(光文社)、『食糧争奪戦争』(学研新書)、『石油の支配者』(文春新書)、『ウォーター・マネー:水資源大国・日本の逆襲』(光文社)、『国力会議:保守の底力が日本を一流にする』(祥伝社)、『北京五輪に群がる赤いハゲタカの罠』(祥伝社)、『団塊世代のアンチエイジング:平均寿命150歳時代の到来』(光文社)など。
 なお、『大恐慌以後の世界』(光文社)、『通貨バトルロワイアル』(集英社)、『未来ビジネスを読む』(光文社)は韓国、中国でもベストセラーとなった。『ウォーター・マネー:石油から水へ世界覇権戦争』(光文社)は台湾、中国でも注目を集めた。
 テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍中。「サンデー・スクランブル」「スーパーJチャンネル」「たけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「みのもんたの朝ズバ!」(TBS)「とくダネ!」(フジテレビ)「ミヤネ屋」(日本テレビ)など。また、ニッポン放送「テリー伊藤の乗ってけラジオ」、文化放送「竹村健一の世相」や「ラジオパンチ」にも頻繁に登場。山陰放送では毎週、月曜朝9時15分から「浜田和幸の世界情報探検隊」を放送中。
 その他、国連大学ミレニアム・プロジェクト委員、エネルギー問題研究会・研究委員、日本バイオベンチャー推進協会理事兼監査役、日本戦略研究フォーラム政策提言委員、国際情勢研究会座長等を務める。
 また、未来研究の第一人者として、政府機関、経済団体、地方公共団体等の長期ビジョン作りにコンサルタントとして関与している。

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