長崎県佐世保市長 朝長 則男 氏
2月12日、HISの経営支援によるハウステンボス再生への道筋が決まった。この一報に胸を撫で下ろした関係者も多いだろう。とくに、この大型施設を有する佐世保市の市長である朝長則男氏にとって、ひとつの大きな障害を乗り越えたことは間違いない。そんな朝長市長に、今の率直な気持ちとハウステンボスの今後について考えをうかがった。
HIS支援に至った経緯
―今年2月、HIS支援のもとハウステンボス再生が行なわれることになりました。その率直なご感想をお聞かせください。
朝長 まず、HISさんに支援していただいた背景についてお話しします。野村プリンシパルファイナンスさんが新しい支援先候補を30社ほど当たられたようですが結局は決まらず、当時、私としては、わらにもすがる気持ちで福岡財界の松尾九電会長に支援をお願いいたしました。しかし、難しい案件であり、さまざまな課題があるなかで、専門的にオペレーションするところが必要であるということも課題の一つである、という認識が福岡財界にもあられました。
ちょうどその頃、HISの澤田さんを県民球団長崎セインツのオーナーである地頭薗哲郎さんから紹介していただき、ハウステンボスの件をお話しいたしました。最初はあまり興味がなさそうでしたが、話をしていくうちに検討してみようかということになったのです。
当初はあくまでも福岡財界のサポート役として考えていましたが、福岡財界側がお断りになったため、後日改めて主体として支援していただけないかとお願いしました。それなら本格的に調査分析をしようということになり、いろいろ紆余曲折はありましたが、最後はお引き受けいただけました。
非常に難しい案件ということは誰もが認めるところだと思います。しかも、行政がまったく支援しなければとても採算が合わないということで、途中で破綻する可能性が極めて大きい事業ですから、佐世保市として可能な限りの支援体制を敷くことにしました。
―澤田会長に対する印象は。
朝長 澤田さん自身がご苦労されて会社を一からつくりあげられた方ですから、非常にチャレンジ精神が旺盛です。カリスマ的なところもありますし、とにかく難しいことでもやってみようという気持ちが強い。ご自身が経営するHISとの関連などから見ても、私は非常に良い方に引き受けていただいたのではないかと思っています。
―九州電力の松尾新吾会長も、ずいぶんご尽力されたように思います。松尾会長が佐世保市出身ということも関係していたのでしょうか。
朝長 それもあったと思いますが、私は佐世保市出身というだけでは、この問題で松尾さんはここまで動かれなかったと思います。九経連の会長をされているということで、九州全体の経済活性化、観光の振興に関して松尾さんのご見識は高く、また憂慮されていたということです。
ハウステンボスは九州の宝で、これから東アジアに向けて核になる観光拠点が必要だということを感じ取っていらっしゃった。ここが廃墟になってしまえば、対東アジア戦略も十分な機能を果たさないというお気持ちが非常に強かったのではないかと思います。
【文・構成:大根田 康介】
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