「作るだけ」では生き残れない
<「勝ち組」と目されたが>
ピークとなる08年8月期の売上高は5億7,700万円で、当期利益1,015万円を計上していた同社。一時は(株)トーセ(京都市下京区、代表:齋藤茂)の子会社となり、トーセ事業本部営業推進室長の西忠司氏が同社取締役会長を務めたこともあったが、09年8月期までに関係を解消。同期の売上高は2億8,412万円に半減、1億1,900万円の当期赤字を計上し1億5,900万円の債務超過となっていた。
「勝ち組」と目されていた同社が倒産に至った要因は何か。複数の関係者の話から、推測の域は出ないが検証してみよう。
まず、取引業者など一部関係者によると、もともと利益率が低い体質だったところに、09年9月3日にリリースされたWiiソフト「王様物語」の開発期間が3年と長期化したことが挙げられる。同ソフトは、元リバーヒルソフトの社員だった安永紀和氏がゲームデザイナーとして参画し、(有)タウンファクトリー(福岡市博多区、代表:湊伸一)と共同企画して製作していた。湊氏もまた、元リバーヒル社員である。
利益率が低かった理由として考えられるのは、1本あたりの開発に関わる人件費だ。同社の場合、プロパーに加えてアルバイトや外部スタッフと常駐契約して開発に当たっていたようだ。1本のタイトルに対して支払われる開発費は、納品までの期間や販売計画などを勘案して契約段階で決まる。そのため開発が遅れると利益率が落ちる。
昨今、任天堂もソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)もクオリティチェックの基準が高くなっており、細部にわたって一定の基準をクリアできなければ納品には至らない。ゆえに、納期を守るうえでもクオリティを維持するうえでも人手に頼るしかないため、プロジェクト終盤は人件費がかさむ傾向にあったという。
また、新たに開発費を得ようと昨年後半に行なったプレゼンが続けて不採用になったのも原因の1つという話も聞かれる。さらに、携帯向けコンテンツの開発やインターネットのウェブサイト制作・管理なども、受注量が一時期に比して減っていたとも言われている。
【大根田康介】
*記事へのご意見はこちら