「作るだけ」では生き残れない
< どこで明暗分かれたか>
同社が開発し、今年1月に発売されたDSソフト「ラストウィンドウ 真夜中の約束」は、ゲーム専門誌でも非常に高い評価を得ていた。決して技術面で他社に劣っていたというわけではない。では、同じソフト開発会社出身でありながら、倒産した同社と急成長したレベルファイブとの大きな違いは何か。
どちらも設立当初は、任天堂やSCEの販売タイトル向けに商品開発を行なう、いわゆる「デベロッパー」だった。しかし2006年以降、レベルファイブは自社開発のゲームソフトを自社で販売する「パブリッシャー」になった点が大きく違うと考えられる(ただし、レベルファイブにも「ドラゴンクエスト」のようにデベロッパーラインは存在する)。
デベロッパーが受注に至る主な経路は2つある。1つは、自社企画を任天堂やSCEに持ち込み承認を受け、開発までして納品するパターン。もう1つは、任天堂やSCEからの開発依頼を受けるパターン。ほかにも他社タイトルのコンバート(あるハード用につくられたソフトをほかのハード用に移植すること)や共同開発というパターンもあるが、デベロッパー案件の多くはこのいずれかである。自社でのパッケージ販売を行なわないため、開発費がそのまま「売上」になる(売上本数に応じたインセンティブの契約がつく場合もある)。
したがって、同社の場合は開発費が確保できなければ致命的となる。最近ではヒット作に恵まれず、開発の遅れも重なったことから開発費負担がのしかかったこともあるが、一部では「浦島太郎化した会社」とも揶揄されている。
今の時代、ゲーム業界は「ただ面白いものを作る」だけでは生き残っていけない。そこには時代に沿って戦略的に販売していく仕掛けが必要だ。それはプレゼンで売り込む場合もしかりである。事実、レベルファイブは「レイトン教授」や「イナズマイレブン」などの作品を、ただ作るだけでなく、戦略的な広告宣伝で巧みに顧客の購買意欲をかきたて、しかもシリーズ化して長く愛されるような仕掛けを構築している。
ほかにも、「人使いが粗かった。契約途中でも服務規定に少々違反するだけで解雇や契約解除となるケースが多かった」(元契約スタッフ)など、組織作りにも難があったようだ。いずれにせよ、ゲーム業界が抱える問題が表面化した倒産劇だった。
【大根田康介】
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