崇明島の現状を見て感じたのは、上海市全体におけるポジションが明確に示され、それを基に開発が進んでいるという点である。崇明島は、上海における「自然・環境のリゾート」および「食料の生産拠点」としての役割を持つ。広大な島の規模(崇明三島で1,411平方キロ)が、日本における県のだいたい半分にあたることを考えれば、同様の規模で開発を行なうことは日本では困難である。そもそも国家体制が違うため、簡単な比較はできない。しかしながら、明確なビジョンに基づいた計画進行のプロセスは、大いに参考になるのではないだろうか。
崇明島は、越海道路が開通していなかったことで、上海の都市化から立ち遅れていた。だが、その分、『東灘湿地』のような国際的な自然保護地区や、森林が手つかずで残り、観光資源となっている。また、大規模農業への転換を図るなかで、立ち退きを余儀なくされた小作農家へは、新たな住宅と雇用(ホテル、レストランといったサービス業)を提供し、生活を保証するといった行政の配慮も特筆すべきだ。
また、建設計画にある国際会議場、付随する宿泊施設の建設も注目すべき点である。そしてまた、これとは別に、ビジネスの交渉に活用できる会議施設の建設計画もあり、上海市内と結ぶ地下鉄も開発される予定だ。近い将来、崇明島が、国際的な環境保全事業、環境ビジネスの交渉舞台になる可能性は高い。
【山下 康太】
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