世界から注目が集まっている上海。
みんなが行きたい上海。
うらやましいと思いますか? しかし上海は、実はこれから中国のなかで、もっと控え目にしなければいけません。
2009年、私は天津へ旅行しました。そこで奇妙なことに気がつきました。宿泊したホテルのテレビに上海のチャンネルがひとつもなかったのです。今、中国各地では衛星テレビが普及しており、どこの省へ行っても、だいたい各省の衛星チャンネルが見られるようになっています。4つの直轄市のひとつである天津のような大都市にしては不思議な話です。
ある説では、上海は嫉妬されていると言われています。他省の人たちは、都心部の目まぐるしいほどの高層ビル群、真新しくピカピカの電車、テレビタワー、リニアモーターカーなどを見ると「やっぱり凄いな」と感心しつつも、やきもちを焼いているそうです。
つまり、これらの建築物・交通機関などは政績として、各地の長官らがみな欲しがっている。そして、「なぜ上海ばかりに資金が投入されるのか」という不満の声が中央政府へ届いているのです。
上海政府はそうした声を重く受け取っています。だからこそ、より良い、調和の取れた雰囲気を作るため、謙虚な姿勢で、慎重に慎重を重ねて、進捗が緩やかで、できるだけ目立たないように都市の発展を図っています。
上海万博の宣伝を例にします。
2010年1月中旬、胡錦濤国家主席が上海万博の状況を視察して以来、はじめて、上海側のマスコミが「上海万博」と言うようになりました。実はそれまで、「中国万博」または「中国上海万博」と表現していたのです。上海はいくら発展しても、どんな成果をあげても、まず、一地方都市として自己認識しなければいけない立場なのです。
(つづく)
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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