上海政府は他の都市を訪問、あるいは交流する時、いつも感謝の気持ちを前面に出して臨んでいます。「上海の発展は中央政府をはじめ、全国各地のご指導、ご支援、そしてご協力があればこそ、今日まで歩んで来ることができました」と、ひたすら強調しています。そして上海は、常に地方への思いやりを持ち、競争しないだけではなく、地方の進歩を称えることもあります。

　高速道路に乗り、隣接する江蘇省に行くと、上海区域内で片側２車線だった道路が、料金所を通過した途端、３車線または４車線のものに一変します。実際、30年の改革開放の歴史を振り返ると、上海は必ずしも常に時代の最前線に立っていたわけではありません。上海浦東の開発・開放が決定されたのは1990年４月です。中国初となる『深圳（しんせん）経済特別区』を設立してから、すでに10年が経っていました。

　リーマンショック以後、2009年の間に中央政府は10カ所の国家戦略区域企画を発表しました。そのなかに上海の名は見当たりません。ただ、同年の３月になって、「上海を将来の国家発展において重要」と位置づけ、「国の国際金融センター、および国際航運センターである」と、改めて強調しました。

　中央政府の視点から考えると、各地がバランス良く、共同発展・共同繁栄をすることが望ましいのです。2010年３月の中国全国人民代表大会で、温首相は「上海は中国を代表しない。今後は力を一層中西部に注ぐ」と発言しました。つまり今後、上海は政策の面で優遇されません。投資誘致においても、上海よりも他の地方政府が打ち出した案のほうが魅力的かもしれません。

　結果として、上海は他の地域と比べて出遅れているような気がします。

　2009年の中国地域別GDPのランキングで、上海は８位でした。同年、中国地域別輸出入総額のランキングで、上海は３位でした。同年、中国地域別固定資産投資額のランキングで、上海は17位でした。

　中国経済の中心と言われながら、いずれもトップではありません。上海は、このような厳しい現実のなかで考えてゆかざるを得ません。しかし、悲観論に陥ってもいけない。そもそも都市発展とは、競争のなかに自分なりの道を切り開いて進んでいくものだと思います。

（了）

【劉　剛（りゅう　ごう）氏　略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。

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