<国際線への固執 スリム化はなるのか>
JALの月次決算は依然として赤字なのに、会社更生法申請後のこの3カ月間、赤字路線は1つも閉鎖されていない。前原誠司国土交通相に委嘱されたJAL再生タスクフォースは45路線の撤退を打ち出したが、支援機構の支援下にあるJALが打ち出したのは、それより少ない31路線(国内17、国際14路線)の撤退にすぎない。グループ会社の削減もタスクフォースが110社を46社に減らすとしたのに対し、JALは57社にするとしており、こちらも削減幅は小さい。
債権者の銀行団から、「もっと思い切った縮小が欠かせない」(三井住友銀行幹部)という声があがるのも自然だった。JALの赤字の真因は、一般的に言われている国内ローカル線ではなく、航行距離が長いゆえに燃料を大量に消費する一方、テロや疫病の流行といったイベント・リスクに左右されやすい国際線にある。しかし、JALは一度手にした権益を手放したくない心理が働き、赤字の原因である国際線を減らしたがらないのである。
3メガバンクは、3月末までに保有しているJAL向けの債権を支援機構に買い取るよう要求し、それは融資してきた銀行団の「縁切り宣言」にも見えるが、実は「JALに圧力をかけて、リストラの上積みを図る」(メガバンク幹部)のが狙いだ。JALが4月に入って国際線の撤退路線数を29に拡大する検討を始めたのは、こうした圧力が背景にある。
しかし、今のところ撤退路線の対象に上がっているのは、関西空港や中部国際空港発着の路線とコナ、サンパウロ、ブリスベンなどの非幹線ばかりだ。肝心の成田発着の欧米主要幹線は、減らしたがらない。
「うちと競合するところは絶対に手放さないという意思を感じる」と、ライバルの全日本空輸(ANA)幹部は見る。ANAを利する撤退はせずに、重要度の低い路線を間引こうというのが見え見えなのである。
撤退路線数を拡大すれば、それに応じてパイロットや客室乗務員、営業要員など従業員の削減の上積みが図られなければならないが、過酷な雇用情勢とスズメの涙程度の割り増し退職金とあっては、自発的に早期退職に応じるものはいないだろう。8つもある労組のうち、7つは闘争意欲の強い反対派労組である。
JAL倒産のA級戦犯と称される、旧経営陣の生き残り組たち。予想される労組の抵抗を押し切ってまでスリム化するという力技を、彼らは果たして発揮することができるのだろうか。
【尾山 大将】
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