07年から08年にかけ、中央政府はインフレを懸念し、不動産業への取締りを強化しました。土地の供給から銀行の貸付まで厳しく審査する体制を作り上げたのです。そのようななかでリーマンショックが発生し、同業界は急激に冷え込みました。土地使用権の売却オークションに応募する業者が激減しました。庶民たちは物価がもっと低くなると願い、じっと耐え続けていました。地方はますます苦しんでいきました。
各地方政府は、権限範囲内なら全力を挙げてさまざまな優遇政策を出し、同時に中央政府に働きかけました。中央政府は『経済発展第一』の方針のもと、規制緩和を実施しました。そして市況は、爆発的に回復し、過ぎた時間を取り戻す勢いで関係者各位は大きく儲けたのです。
地方政府は大金を都市経営に投入しました。上海へ行けば、至るところでその成果を目にすることでしょう。地下鉄、電車、都市高速道路など、身近なところで、前進の歩みを感じられます。「やはり政府のおかげで、幸せを与えられたのだ」と、ただただ感嘆するばかりでしょう。
しかし、これらの大型プロジェクトを実施するのに、財政収入だけでは賄えません。むしろ頭金にしかならない。銀行からの融資を受けざるを得ないのです。それも、政府の担保で・・・。
ここまでで、ひとつの流れができました。不動産業がよくなると、地方財政収入が増える。収入があれば、借金返済もできるし、都市の継続的な発展を維持できる。逆に、地方政府が破綻すれば、進行中のプロジェクトも中途半端になってしまう。
都市のインフラ整備の充実に伴い、都市の魅力がますます高まります。しかし、都市の規模や容量には当然、物理的な限界があります。交通の便が良く、学校や医療機関を備え、暮らしやすい環境は、皆が望むものです。したがって、都市部の不動産物件は、日を追うごとに上昇することになります。
結果、不動産物件の価格は、都市経営によって高まるとも言えます。また、不動産取引により税収も増加します。不動産業界と地方政府の双方が盛り上がる循環ができたのです。不動産業界は都市の発展に資本金を提供します。都市の発展は不動産業界に利益をもたらします。相互促進の道筋に沿って一緒に伸びるのです。
しかしながら、価格がいつまでも上昇するわけにはいかないでしょう。今後の進展は注目しなければなりません。
(了)
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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