昨年11月末に決済不調となり、今年3月26日に破産手続き開始決定を受けた(株)メン・テック。負債総額4億円弱は大型倒産とは言い難いが、債権者には零細企業や個人事業主が多く、残した爪あとは小さくない。
そのメン・テックだが、破産申立の陳述書の中で倒産の主な原因として(1)市況の悪化、(2)経営計画の甘さとともに(3)貸し剥がしを挙げている。特に(3)貸し剥がしについては、主力銀行の勧めもあってセーフティネットで調達した5,000万円を、入金後すべて貸し剥がされたために運転資金の目算が狂った、と述べている。
セーフティネット融資は信用保証協会の保証付きで実施される融資で、中小企業の経営安定を目的としている。そのため、金融機関が当該融資を強制的にプロパー部分(従来の貸付)の返済に充てさせる行為(貸し剥がし)は禁じられ、これを犯した金融機関にはペナルティが課されることになっている。本件につき当該銀行の担当窓口にコメントを求めたところ「事実無根で憤りを感じる」とのことであった。
メン・テックの取引業者に対する支払遅延が恒常的なものであったことからすれば、同社の言い分が全て正しいとは考えにくい。また、発覚時に銀行側が背負うリスクを考えると、全面的な貸し剥がしが行なわれた可能性は高くはないであろう。しかし、少なくとも「貸し剥がされた」との思いを同社が抱いていたことだけは間違いない。倒産までには至らずとも、同じ思いを抱く中小企業経営者は少なくないと思われる。
銀行は公器であり、中小企業を育成する役割を担っている。市況が厳しさを増し中小企業が資金繰りで頭を抱えるいまだからこそ、その社会的使命を全うしてほしいと切に願うばかりである。
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